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光の鳳雛、時の伏龍 6

 

 マクシミリアンは、女社長と他の幹部を他の部屋に移動する事を優雅に促しながら、マクシミリアンのプランを説明をはじめた。
 マクシミリアンは、現段階での技術力では、人工的に超能力者を作り出すことは難しく、できたにしても、天然のサイクラフトには、かなわないと判断した。
 そこで、マクシミリアンは、天然のサイクラフトを探し出し、契約によって雇い入れ、サイクラフトの研究を進めつつ、同志になるものには、組織の仕事を担ってもらう。
 というものであった。
「ふん、サイクラフトを契約で縛れるものか」
 エルストが悔し紛れに呟いた。
「サイクラフトがみんな、あなたのような人間ではありませんよ」
 マクシミリアンは涼風のように、痛烈な皮肉をエルストに言ってのけ、エルストは二の句がつなげず、ただ、ただうなるだけだった。
「がはは、マクシミリアンの勝ちだ。
 エルスト」
 蝦夷谷が豪快にわらって、そう指摘した
「つきました。
 彼が、サイクラフト サウザーです」
 マクシミリアンの自信満々の口ぶりは、どこか傲慢ささえ感じさせた。
 実際、エルストは不満の表情を隠さなかったし、蝦夷谷も不快な表情をみせた。
 女社長と白狐は無表情でサウザーを観察した。
 サウザーは、上半身が裸のトランクス姿で、無駄の無い筋肉を露出していた。
 肉食獣を思わせるギラギラした視線に、不敵な笑みをうかべている。
 サイクラフトというよりは、格闘家という印象があった。
「どんな能力を持っているの?」
「一言で表現するなら戦士そのものです。
 光を媒体に超能力を使います」
「そうですか。
 では、百聞は一見にしかず。
 戦士なら戦いの中で、その能力を見るのがいちばんですね。
 手あわせをお願いしましょうか」と白狐。
「白狐。悪い事はいいません。怪我をしますよ」
 マクシミリアンは、白狐に警告する。
 白狐は、無言で頷き、上着をハンガーにかけた。
「あなたのプランに乗ろうというのです。
 ただし、条件があります。
 私の満足できるだけの能力があればの話です。
 そして、彼の力が、私の認める力を持つ存在なら、彼を引き取ります」
 白狐はネクタイをほどきながらマクシミリアンに言った。
「なるほど。
 あなたがそうおっしゃるのならかまいません。
 本当は、こちらからあなたにお願いしようと思っていた
ところです。
 しかし、命の保証はしませんよ」
「契約成立。ですね」
「それでは、私たちは、観客席に席を移動しましょう」

 続く 

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 呟き尾形 2006年8月13日 アップ

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