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チューリップの涙 04

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 竜司は、せっかくの非番と再会のときが邪魔され、怒りがこみ上げて
きた。
 竜司は、その怒りを制御して、怒りの感情を体内の気のエネルギーに
し、内気として、掌に集め、破壊のエネルギーに変換させた。
 竜司の手の掌から怒りの外気として気弾を放たれた!
 気弾は風を斬りながら、妖魔の腹部に命中し、妖魔は、悲鳴を上げな
がら吹き飛ばされた。
 竜司は、その場で怒りを鞘に納めると、深く深呼吸をする。
 内気を制御するということは、呼吸を制御するということとほぼ同意で
ある。
 そして、竜司は、その気を外気に変換し、自らの体にまとった。
 竜司は左足で地面を蹴りつけ、超人的な脚力を見せ、弾丸のような勢
いで、妖魔に飛び蹴りを与える。
「ギャワワワァァァ」
 妖魔は悲鳴を上げつつ逃げようとするが、竜司は間髪要れずに鋭く肘
打ちをくわえ、妖魔の頭を鷲づかみして膝を連打する。
 妖魔は必死にもがくが、氣のこもった竜司の打撃にどんどん弱ってくる。
「とどめだぁ!」
 竜司の氣のこもった手刀が振り上げられたとき、どこからとも無く、そ
の手刀に気弾が飛んきて、竜司の攻撃を阻止した。
「誰だ!」
 竜司は気弾の飛んできた方を振り返るがすべての気配が消されていた。
 竜司の叫びに応じるものはなく、ただただ、むなしく竜司の声が響いた
だけだった。
 妖魔は、竜司が見せたスキをついてその場から逃げ出す。
「大丈夫?」亜沙美が竜司に手を差し伸べる。
「ああ、なんとかな」竜司は、苦笑しながら応える。
「さすがね」亜沙美は微笑んだ。
 竜司は亜沙美の微笑みに、妖魔が取り逃がしたことと謎の気弾のこと
は保留しておくことにした。
「ところで、あなたに見せたいものがあるの」
「なんだ?」
「オーパーツよ」
「おい、オーパーツって、あの・・・」
「そう、そのオーパーツよ」
 オーパーツとは、OOPARTSと表記し、”Out Of Place Artifacts”の
略で”場ちがいの加工品”という意味である。
 当時のテクノロジーでは実現しえることが極めて困難な物質が発見さ
れたときしばしば用いられることがある。
 その時代にはありえない物、たとえば、アステカの遺跡で発見された
とされる水晶髑髏がその代表である。
 ひとつの大きな水晶から削り出されており、当時の加工・研磨技術で
は不可能とされる精緻な造形が特徴だ。
最近の研究では水晶ではなくクリスタルガラス製だという報告もあるが、
だとすればまさしく近代の産物である。 
 ほかにも、4000年前の頭蓋骨に脳外科手術の痕跡があったり、人
間と恐竜が共生していたことを示す紀元前2500年に作られた恐竜土
偶などである。
 オーパーツには、さまざまな諸説があるが、人類以外の高度な文明が
存在していた。とすれば、説明はそれほど難しくは無い。
 もちろん、ナンセンスだ。迷信だ。
 という人間は少なくない。
 しかし、非科学的な迷信の代名詞とされてきた、妖魔の出現。魔術の
再現性、特魔官の必要性などが、以前の非科学的であるという指摘がい
かに、決め付けであり、いい加減であるかを立証した。
 以前の非科学的であるという指摘は、なにも試すことなく、印象による判
断に過ぎなかったという事だ。
 そのため、唯一妖魔に対抗できる手段である魔法は、非科学的である、
信じられないという先入観により、ほとんど、本格的かつ客観的な研究が
なされていなかった。
 しかし、いまでは、唯一妖魔に対抗できるという分野となり、未開拓であ
るがゆえに、企業がこぞって競争する分野になった。
 亜沙美は、オーパーツの研究をしている研究所の所長であるという。
 竜司自身は、オーパーツには、興味がなかった。
 が、亜沙美の誘いを断りたくもないし、もうすこし、再会の余韻にひたり
たかった。
 それに、亜沙美の子が、誰の子供であるかも少なからず好奇心がしげ
きされた。

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