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チューリップの涙 05

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 竜司は、亜沙美に連れられて亜沙美が所長をしている研究所へついた。
 真新しい白い壁と、ところどころに意味不明の文字が羅列されている端末
の画面が並べられていた。
「これが、おーばーつ。ってやつか」
「ええ、黄金の棺」
「どこがどんな風に、おーぱーつなんだ?」
「この棺が、1万年前の地層から発掘されたの」
「誰かが埋めた
んじゃないのか?」
「まぁ、そういう偽装は、ありえないとはいいきれないわね。
 もちろん、その線で調査はしたの。
 でも・・・」
 亜沙美は気難しそうに、右手を左ひじに手をあて、左手をあごにあてて言葉
を止めた。
「まぁ、難しい事を言われてもわからないが、おまえのその癖をだすというこ
とは、客観的な情報だってことだな。
 となれば、やっぱり一万年前のものだ。ってことだな」
「え? 癖?」
「それだよ、それ、あごに手をあてて気難しい顔をしていると、必ず、納得で
きないときなんだよ」
「あら、そうだったの?」
「ああ、そうさ。
 で、それがどうしたんだ?」
「ええ、表面は確かに黄金なんだけど、問題はその中身。
 X線も遮断されているし、重量がすごいの」
「金だから重いんじゃないのか?」
「金よりも重いわね。堅さもいろいろ試してみたけれども傷をつけられないの。
 それなのに、こんなに見事に加工している。
 これは、すごい技術だわ。
 それに、このオーパーツが厄介なところは、その技術があるなら、もっと他の
ものがたくさん見つかってもおかしくないはずなの。
 でも、それだけがポツンとあるのよ」
「まるで、タイムマシーンで未来から技術をもってきたとか、宇宙人がやってき
たみたいなものだな」
「そう、そうなの。
 仮説として、それを前提にすれば、オーパーツの説明はつくわ」
「おいおい、タイムマシーンがあったとしても、タイムパラドックスはどうする。
それに宇宙人だって言っても、信じられないぜ」
「それをいうなら、数年前なら、あなたが魔法を使っているのも信じられなかっ
たはずだわ」
「ああ、まったくだ。
 俺が保安官をやっているのも、魔法を実際に使っているのも正直信じられない」
 竜司は肩をすくめた。
「科学において重要なのは、事実であって、思い込みじゃないって事ね」
「で、これを俺に見せるということはなにか目的があるんだろ?」
「さすがね、竜司君。
 さっきの気功法でしょ?
 オーパーツに使ってみてほしいの。
 いえ、攻撃とか、そういうのじゃないのよ。
 なんていうの、気をこのオーパーツと関係がありそうな感じなの。
 ね、お願い」
 竜司は、亜沙美のその言い方から、瓶底メガネの頭でっかちのクラスメイト
だった学生のころの面影をみた。
(へぇ、今ではすっかり美人になったが、あの頃の変わっていないんだな)
「ねぇ、竜司君、ダメ?」
「いや、いいさ」
 竜司が、オーパーツに気功で気を流そうと触れた瞬間、竜司の体が燃える
ように熱くなる。
 竜司は、オーパーツから手を離したあと、そこから日本刀の柄が現れ、そ
の日本刀が竜司の手に握られた。
(汝、この世の苦しみにたえられるか?)
 竜司の心に直接語りかけられるような声が聞こえる。
「はん、それができなきゃ、いきていけねぇだろ!」
 竜司は声を振り払うように怒鳴りつけた。
(面白い。この世の苦しみを味あわせてやる。
 代償は、我が力だ)
 すると、研究所にある端末の画面が赤黒く点滅し始め、真新しい白かった壁
がその光に染まる。
 それとほぼ同時に警報機が鳴り響く。
 警報器の警報音が鳴り響く中、オーパーツが徐々に開きかけ、その隙間か
ら干からびた手が伸びる。
 その手は、ゆっくりと近づく。
 亜沙美は、恐怖で体が金縛りになったように身動き一つできなくなり、ついに
干からびた手は、亜沙美をつかみ、その手が触れたところから亜沙美の生気
が抜けていくのが目に見えてわかった。
 そして、干からびた手は、亜沙美の生気を吸い取るように、徐々に生気をお
びてくる。
 竜司はとっさに、干からびた手を刀で一刀両断し、手を切断した。
 その手は切り離されても尚、何かをまさぐるように這いずり回る。
 竜司は、その手に対して、体内の気を一気に放出させその手の動きを封じ
込めた。
「亜沙美! 大丈夫か!」
 竜司は叫ぶが亜沙美の返事がない。竜司は周りを見渡すと、亜沙美は、死
人のような青白い顔で、その場に立ち尽くしている。
 竜司には、亜沙美がそよ風だけでたおれてしまいそうなほど、か細い存在に
感じられた。
「亜沙美!」
 竜司は亜沙美を抱きかかえ、医務室を探す。
 亜沙美は、今にも光を失いそうな視線を、竜司の傍らにある刀をみた。
「ま、まさか、それは侍神具・・・
 み、水間、あの人のいうとおりだったわ。
 お願い、竜司君。
 息子を・・・利勝を・・・水間利彦に預けて・・・。
 そして・・・水間に・・・協力して・・・」
「あ、あさみぃぃぃぃ!」
 真新しい白い壁は、警報機が点滅する赤に染まり、竜司の叫びを打ち消す
ように、警報機は鳴り響いていた。

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