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●神崎耀(かんざきあきら)
 窓際のテーブルで時間を潰していた学生たちが少しだけざわめいた。
 恵子、彪雅、ジン、ジョーの視線が窓の外に向けられる。
 そこには、神崎耀が隣りに女性を連れて喫茶ルナに来たのである。学生たち
は耀の友人らしく、耀の隣にいる女性に釘付けである。
 口々に耀に耀の隣にいる女性のことを聞く。
 長い黒髪に清楚な雰囲気が近寄りがたく感じるのだが、友人一同はこれをき
っかけにお近づきになりたいと思っているのが目に見えて分かった。
「いや、彼女は花岬暁子(かみさきあきこ)さん。近くに越してきて、こんど
家の学校に転校することになったんだ」
「引っ越してきたばかりで、分からないことばかりですけれど、よろしくお願
いします」
 暁子が丁寧に一礼をすると、今まで沈黙を守っていた喫茶ルナにあるディス
プレイが突然つく。
 臨時ニュースのヴィジョンメールが届くと、スイッチが入る仕組みになって
いる。
『ニュースをつたえます』
 電子的な声がニュースを淡々と伝える。その内容は、連続猛獣殺人事件の内
容で、マツド第4高校の教師が、猛獣に襲われたというニュースであった。
 そして、猛獣の画像が確認されそれがディスプレイに映し出される。
 全身が闇のような黒で、所々に丸い傷があり、血が噴き出している。猛獣は
豹のようなしなやかな体つきに、緑ががかった蛍光色の丸い瞳が残忍な光を放
っていた。
 白いはずの牙は鮮血に染まっており、その場からすぐに闇の中に溶けこむよ
うに画面から消え去った。
 そして、喫茶ルナに沈黙が駆け抜けると、犠牲者のデータがディスプレイを
流れる。
「おい、あれ・・・・。担任の内村だぜ」
 耀がそう呟くと友人達は無言で頷いた。

●綾小路ゆうあ(あのやこうじ・---)
 綾小路ゆうあは、20の新聞記者である。茶色い長い髪は、みつあみにして
後ろに束ねて邪魔にならないようにしている。
 意志の強そうな視線は、今話題となっている連続猛獣殺人事件の資料に向け
られている。
「おい、綾小路、ミーティングだ」
 そういったのは、自称綾小路の世話役、富樫慶次郎(とがし・慶次郎)であ
る。見た目は怖いが、一緒に仕事をすると案外優しいこの男は、口が悪いくせ
に照れ屋である。
 今後の新聞についてのスケジュールの報告が終わると、はげ頭の編集長が
「他になにか意見は?」という。大抵、この言葉がミーティングの終わりを告
げるが、ゆうあは思い切って挙手した。
「なんだ? 綾小路」
「は、はい。あのう、なぜ連続猛獣殺人事件について、もっと詳しい報道しな
いのでしょうか? LDの人々は身近な危険に精確な情報を知りたがっていま
す」
「綾小路!」
 富樫がゆうあをしかりつけるように言う。
「ああ、富樫。それは私から説明しよう。身近な事件だからこそ、うかつに報
道できないんだよ」
「納得できません!」
「綾小路!!」と富樫。
「まぁ、まぁ、富樫。ためしに綾小路に取材を任せよう。そうすれば納得する
だろう。そうだな、綾小路」
「はい!」

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