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●九重神一郎そのA
 ジョーの目論見は少しだけ計算がずれた。
 ジンは教会に行ったのだが、何の成果は得られなかったとい
う、ジンのぶっきらぼうな言葉に、少しだけガッカリしたのだが
、ただ一つ、収穫があったという。
 牧師は何か隠している。と言うことである。
「なら、俺がちょっと探ってみるよ。だって、俺、あの牧師とは
それなりに面識あるもの。
 でね、ちょっと聞きたいんだけど、今回の仕事の内容ってどん
なの?」
「悪いが、この仕事については教えられないな」
「じゃぁ、改めて仕事を依頼するってのはどう?」
「依頼主は?」
「え? 依頼主は・・・・」
 ジョーは誰を依頼主なるのか解らなくなった。自分は論外だし、
香子はその気だが依頼すると言うわけではなさそうだ。となれば、
恵子が依頼主に最適だが、恵子は探偵に頼むという点では一言も
発言していない。
「探偵さん。私の父を、神崎博史を探して下さい」
「詳しい話を聞かせてくれ」
 ジンは恵子の依頼を受けることにした。

●ナイト
 ナイトは体の傷に巻かれている包帯を取ると、右手の拳を何度
か握って回復を測っていた。
「・・・・」
 ナイトは病院の入り口の気配を感じとり、入り口を見る。
 ギィィィィ。
「あの〜」
 病室にこっそり入り込むのは真理逢だ。真理逢は三流のこそ泥
のように、隠密行動をとっているつもりなのだが、その行動はか
えって真理逢を目立たさせる。
「・・・・おまえは・・・・」
「あ、内藤さん! ホントに大丈夫だったのですね?」
「内藤・・・・ああ、俺の名前か。そうだ。大丈夫だ」
 ナイトはそうぶっきらぼうに答えると、ベットから立ち上がり、
窓を開けてそのまま飛び降りる。
「凄い。ここは3階なのに、そこから飛び降りるくらい回復した
のね」
 真理逢はただ感心していた。

●轟丈太郎そのA
「ルナの恵子さんに聞いたんすけど、記憶喪失の人って記憶戻っ
たんですか? もし良かったら俺にも何か手伝わせて下さいよー」
 ジョーは唐突に教会に訪れ、牧師にそう話しかけた。
「丈太郎君、君には関係のないことですから、そんなことを気に
しなくても良いのですよ」
「いや、そうは行かないっす。だって、牧師さん右の頬を打たれ
れば左の頬を差し出せってこの前言ったじゃないですか!」
「丈太郎君、それは引用の仕方が違います。まぁ、記憶喪失の人
は他言無用ですよ。ルナの恵子さんにもそう伝えて下さい。迷え
る子羊を正しき道に戻すためには、社会の管理からかくまうのも
必要なのです」
「解りました。でも、何かあったら連絡下さいよ。やばいことだ
ったら俺のバイクで牧師さんも運びますから」
 ジョーはこれ以上聞いても話が進展しないと感じたのだろう、
聞き込みはここでやめることにした。
「好意は受け取っておきますよ」
 牧師が微笑むと、教会の扉が開く。
「こんにちわ。真理逢と申します。しばらくここでお手伝いをさ
せて下さい」

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