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●工藤香子(くどうきょうこ)
 工藤香子は轟丈太郎に送られて、YS製薬の病院に着いた。
 問題は自分が脱出した時、黒輝が自分についてどのように言ったかが問
題である。
 しかし、こんなところで戸惑っていても仕方がないとばかりにとりあえず、
同僚のいる部屋に忍び込んだ。
 すると、香子は仕事をサボタージュしていた事になり、同僚に怒られた後、
外科部長にもしっかり絞られた。
「ふぅ」
 香子はため息を一つつくと、そのまま残りの業務をこなした。
そして、業務の合間に自分の端末で黒輝、ナイトと呼ばれていた内藤とい
う患者と恵子の父である神崎博史について調べる事にした。
香子はまず黒輝の経歴を調べ始める。彼は外科医の中でも大学のころ、
サイバー工学を専攻していたようだ。
(サイバー医がどうしてこの病院に?)
 香子は疑問を抱きつつ黒輝の経歴を調べるがその後、外科医として病
院を渡り歩き、3年前にこの病院に就任したようだった。
(特に変わったところは無いわね。まぁ、強いてあげれば、この病院にきた
とたんに大出世したくらいかしら)
 香子は次に内藤に調べ始める。基本的に患者のプライベートについて
はそれなりの権限のもった人間しかアクセスできない事になっているので
ある。
 外来患者で大怪我をした患者のデータなら外科医である香子がアクセ
スするのはなんの問題も無い。内藤は事故による怪我で入院したからだ。
それによると、特に変わったところの無い普通のサラリーマンであること
が分かっただけだった。
「あれ? この顔は…」
 香子は内藤の顔写真や身体の特徴についてのデータを見たとき、別人
だった。
「どういうこと?」香子は一人呟く。
「まさか!」
 香子は内藤のデータの更新日付を確認してみる。すると、更新日付は
香子が病院を脱出した後だった。
 すると、香子宛に電子メール着信のメッセージがディスプレイの真中に
現れる。香子は気にすることなくそのメールを開いた。
"警告、あなたが深入りすれば、あなたは私のモルモットになります。その
覚悟があるなら踏み込みなさい"
 IDは伏せられ、ハンドル名がリリトで記されたメールにはそう記されてい
た。

●轟丈太郎
 轟丈太郎は香子から病院の構造を聞き出し、見取り図をジョーのIDに送っ
てもらう事を約束した。
 ジョーは香子を病院に送り届けると、そのまま知り合いのハッカー、タク
のところに直行した。
 部屋の中は薄暗く、部屋中コンピュータだらけで、ディスプレイの光だけ
がその部屋の光源だ。コンピュータ端末の隙間に本や記憶チップが散ら
かされている。
 奥には肥満気味で不揃いの無精ひげを生やし、分厚いメガネをかけた
男がいた。
「よ! タク、俺のチップYS製薬のチップに書き換えられる?」
「いきなりなんだよ。ジンさんの知り合いだからって近頃なれなれしいぞ」
 そう、タクは元コンピュータ技士である九重神一郎の知り合いで、そのツ
テでジョーはタクと知り合ったのだ。
 タクはハッカーの中ではそれなりに有名である。この前の偽造チップもタ
クがとあるコンピュータのデータを書き換えたものだ。
「だいたい、YS製薬はハッキングは結構危険なんだぞ」
 そういいつつ、タクはメガネの奥の瞳が輝かせた。
「じゃぁ、決まり。今度知り合いの女の子紹介するよ」
「あ、いや、メールIDの紹介だけで良いよ」
 タクは顔を赤らめる。
「はは、そんなんじゃ念願のガールフレンドは出来ないよ」
「いいんだよ。僕には僕のやり方があるんだ。
 あ、それより、ジョー、気をつけたほうが良いよ。君のデータバンクがハッ
キングされた形跡があったから。それとジンさんも。
 リリトっていうハンドル名までは突き止めたんだけどね。それ以上になる
と、警告のメールが届くんだ」
「へぇ、どんな内容?」
「えっと、これ以上深入りすると、あなたは私のモルモットになります。だっ
たかな?」

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