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●真理逢
 真理逢とAT−0023ことエインは街を散策した。特に何の変哲も無い町
並みで、サラリーマンは忙しそうに歩き、学生達は他愛も無い話に花を咲
かせ、恋人達は肩を並べ歩き、親子連れは笑顔を街に振り撒いていた。
 皆が幸せそうだった。
(まぁ、なんてすばらしいLDなのかしら。他のLDは貧しそうな人や自分を
不幸だと勘違いする人が多いのに)
 真理逢はそんなことを考えながら街を歩いているとAT−0023が真理逢
の袖を引っ張る。
「あれ、牧師様?」
 AT−0023が指差す方向には、物騒な男達が牧師を睨みつけていた。
「え? あ、そうですわね。どうしたんでしょう?」
 真理逢がそういった時には、AT−0023はすでに牧師の方に走り出して
いた。すると、牧師は物騒な男達と路地裏に入る。
「牧師様? どうした?」
 AT−0023が路地裏を覗き込むと、牧師自らAT−0023に教えた地獄
のような光景が飛び込んできた。おかしな方向に曲がった手足の男達が何
人かうめき声をあげ、5体満足の男達は、地獄を目の当たりにした罪人が
恐怖に支配されたような表情で牧師に慈悲を願い出ていた。
「キサマガオリジナルカ?」
 牧師だった男はAT−0023をにらみつける。その男の頬にはナイフのよ
うな物で切られており、その傷口から一滴の血も流れず、金属を覗かせて
いた。
 AT-0023は危険を察知し、牧師の目を見つめる。AT−0023は能力を
使ったのだ。
「ック、ナンダ、カラダガオモウヨウニウゴカナイ」
 牧師だった男はその場に膝をつき、力を振り絞るように奥の路地裏に遁
走していた。
「エイン、どうしたの?
まぁ、こんなにけが人が。早く手当てをしないと。エイン手伝って」
そして、その日、牧師は教会へ帰ってくる事は無かった。

●ナイト
 ナイトは周りを見渡し、歩道に人の気配が無い事を確認すると教会と歩道
を隔たる塀を飛び越えた。
 ナイトの任務はターゲットの暗殺。ターゲットであるバイオソルジャーの
気配は確認済みである。強化された五感は常人であれば情報飽和となり、
かえって歩く事さえ出来なくなってしまう。
 それを可能にさせているのはナイトの訓練の賜物だろう。
 不意にナイトは教会の中に数人の人の気配と硝煙のにおいを察知する。
 ナイトは教会の中に入る。
 教会の礼拝堂には体格の良い男が1人と黒服を着た男達が4人いた。
 体格の良い男は背中から4本のギミックの腕が飛び出ており、内、1本
はあらぬ方向に曲がっていた。
 ナイトは彼らを知っていた。チェックメイトのメンバーである、ルークある。
黒服の男達はその部下であるポーンだ。
「ば、化け物」
 ルークがそう呟いた瞬間、礼拝堂の黒い影がポーン1人の首筋を噛み切っ
た。
 ポーンはその場に倒れこみ、十字架に貼り付けられたキリスト像の正面に、
猫型のバイオソルジャーがいた。
「う、うわー」
 残りのポーンは恐怖に顔を引きつらせマシンガンを乱れ打つ。
 しかし、バイオソルジャーはそれをあざ笑うかのように、礼拝堂の壁をけ
りつつ、ピンボールの玉のように飛び回り弾撃をかわした。
 ポーンたちの銃撃が終わったのは弾切れよりも、彼らが絶命したいたから
だ。
「ば、化け物」
 ルークがもう一度そう呟くとナイトがルークの前に出る。
「あれは俺の獲物だ」
 そうルークに言った後のナイトの視界には、すでにバイオソルジャーしか
入っていない。
 そのナイトのただならぬ気配を感じ取ったのか、バイオソルジャーは目を
見開き、牙をむいて、ナイトを威嚇する。
 その瞬間、ナイトはルークの腰にあった拳銃を抜きバイオソルジャーを撃
った。バイオソルジャーはそれをかわし、右脇にあった壁を蹴ろう飛び上が
った瞬間、バイオソルジャーの眉間に高周波ブレイドが突き刺さった。
 ナイトが拳銃を撃った瞬間に、バイオソルジャーの微妙な動きを読み取り、
行動を予測した上で高周波ブレイドを投げたのだ。
「…アキラ、オレノオリジナル…アキラハマダカ…」
 バイオソルジャーはそんな言葉を残すと、肉体が音を立てて解けていく。
「任務完了。後始末は頼んだぞ」
 ナイトはそうルークに言い教会を立ち去った。

 その後、弾痕だらけの教会をおとずれたのは轟丈太郎だった。
「どうなってんの、いったい」

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