ホーム > 目次へ > 小説 > Sun Of Night
●小川真琴(おがわまこと)
小川真琴は調査に息詰まっていた。
「リリトか・・・調査がすすまないや」
マコトがそうつぶやきながら、いすの背もたれに寄りかかる。
「仕方ない。タクに依頼するか」
マコトはそうつぶやいてから、タクのアドレスに調査依頼のメールを送っ
た。
●ナオ・ベルディス
ナオ・ベルディスは、今日という休日を危うく寝て過ごしそうになった。
(チィ、やっぱり、ダチの死ってのは、結構くるもんだな)
そんな物思いにふけて1日すごすのはさすがにそれは不健康だと思い、
気まぐれに外を散歩することにした。
(一連の事件の被害者が神崎塾卒業生だった。偶然にしちゃぁできすぎ
ている。神崎塾・・・科学研究サークルの発展版で、神崎博士がビジネス
ではなくボランティアで始めた塾。
結構本格的でだった。俺みたいに興味本位で通う奴も入れば、本気で
学ぶやつもいた。そこで、富樫や姫崎と出会ったんだよな)
ナオが大通りに差し掛かると、牧師の格好をした姫崎剛を見かける。
「姫崎!」
ナオが思わず、彼の名前を口にする。
だが、牧師は気がつかなかったように、路地裏に入って行く。
ナオは牧師に引き寄せられるように牧師の跡をつけるが、その姿はなく、
目の前には、YS製薬の病院があった。
●十六夜
十六夜はベンチに座りこみ、マスターを探し出す方法の算出をしていた。
十六夜の算出中は余計な情報をシャットダウンするために瞼を閉じてい
る。
10秒ほど人形のように動きを止めた後、不意に瞼が開く。
十六夜の思考ルーチンは姫崎剛を探すことが、マスター早期発見の糸
口だ。
と結論をだした。
●綾小路ゆうあ
綾小路ゆうあのとなりのディスクは富樫の席である。
ゆうあは息詰まった取材に鉛筆を口にくわえて上下させながら、雑然とし
た富樫の机の資料が目に付いた。
ゆうあは好奇心で資料の山の中から1部資料を取り出してみた。
多少、罪悪感はあったものの、自分の先輩がどのように資料をまとめて
いるのか興味を持っていたし、富樫はつねにゆうあに仕事は先輩や上司
から教えられるのではなく、盗むものだと教育されているというのもあった。
その資料には、LDD計画に関する報告書という文字が見える。
表紙をめくると、LDD計画、重要参考人。という項目に、
神崎博士、姫
崎剛、東郷竜之介、黒輝相馬人の名前があった。
とその時、後頭部に強い衝撃を受ける。
「いた!」
「いた! じゃねぇ。勝手に俺の資料を盗み見るな!!」
富樫はそういって再びゆうあをこづく。
「だって、富樫先輩は・・・」
「だまれ!」
富樫はゆうあの弁明など利く耳を持たぬといわんばかりだ。
おそらく、かなり重要な書類だったのだろうが、そんなに重要だったら、
机の上に置いておく方が悪いじゃないかとゆうあは心の中で不平をもらし
た。
●墓地
白い十字架が立ち並ぶ共同墓地に牧師が一人立っていた。
「・・・・主よ、あなたはなんと言う皮肉屋なのだ。
すべてを捨てて、初めて私の欲したものを下さった。
あなたは聖書の中でこう仰っている。
【生ける犬は死せる獅子より勝れり】
あなたが生命の源ならば、死して天に召されるよりも生きて地獄の門をく
ぐることを選ぼう。
そして、生きて修羅の道を歩もう。
それがあなたへの復讐だ。
私がなぜこの道を選んだのかご存じなのでしょう?
救いの手は地獄の住人にこそ必要ですからね。
今、あなたが私に手をさしのべたように・・・」
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