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●十六夜(いざよい)
 コードネーム、BG-2179 TYPE-βはお手伝いADである。彼女の主人、東郷竜
之介は彼女の事を、コードネームではなく、十六夜と呼んでいる。
 東郷は先日、何者かによって誘拐された。
 既に警察に届け出てはいるものの、主人を守る事をプログラミングされている
十六夜は、そのままじっとしているわけにも行かず、姉妹機に家事を任せ、東郷
を捜索している最中だった。
 正面からシスターと少女が並んで歩いて来る。
(マスターの腹違いの兄は牧師をしている。正面から来る人物が何か知っている
可能性、10%)
 ADの阿修羅システムがそのような演算結果を算出した。これまでの可能性は
1%未満のものばかりなので、かなり高い可能性となる。
 十六夜はシスターに話し掛ける事にした。
 と、その時、黒服の男達がシスターを囲み、どこかに連れて行こうとする。
十六夜はこれを、黒服の男たちがシスターを誘拐する行為だと断定し、大切な
情報源を守るため、阿修羅システムを戦闘モードに切り替えた。
 黒い影は数人でシスターの手を強引に引っ張る。
十六夜は長い黒髪をなびかせ、シスターの手をつかむ男の手をつかみ、そのま
ま腕の骨を握力で折ってしまう。男は激痛でその場にうずくまるとのこりの三人の
男が十六夜に襲い掛かる。十六夜は一人目をカウンターで殴り倒し、そのまま右
足で二人目にけりを入れる。十六夜は二人目が倒れる前に、彼を踏み台にして、
中に舞い上がり、回転しつつ三人目に膝蹴りを食らわせた。
倒れた男達は、そのままムクリと立ち上がり、そのまま退却した。
 シスターは十六夜の曲芸のような攻撃に、ただただ感嘆し、少女は無表情のま
まその光景を見つめていた。
「助けていただき、ありがとうございます。私の名前は真理逢、こちらはエレンです。
あなたは?」
「私はBG-2179 TYPE-β」
「なんと御礼を言っていいのか」
「それはかまわない。この写真の男をしらないか?」
「まぁ、牧師様を太らせたらこんな感じね。エレン」
 エレンは無言で頷いた。
「その牧師のことをおしえてくれないか」
「ええ、ここではなんですから、どうぞ教会までいらしてください」

●綾小路ゆうあ(あやのこうじ・−−−)
 綾小路ゆうあは取材の結果をまとめていた。それによって分かった事は、コン
ピュータ技士とLDオペレータはハッカー仲間である事を突き止めた。
 YS製薬について調べていたらしく、殺害されるまで、リリトというハンドル名の
人物と連絡を取り合っていたことが仲間のハッカーから証言が取れた。
 メカニックについては、最近、妙に個人で引き受ける仕事が多かったらしく、
ちょくちょく教会に行っていたらしいことが分かる。
 女新聞記者は連続猛獣殺人事件について追っていた。死亡前夜、「教会につ
いて調べていたらしい」と同僚から情報を得られた。
 教師については学校側は口を固く閉ざし、どうしようもなかった。
 このことを富樫と編集長につたえ、記事にするよう進言したが、二人は情報不
足の一言でゆうあの意見を取り下げた。
「なぜですか! 納得できません」
「新聞は情報の垂れ流す場所じゃねぇんだよ」
「まぁまぁ、富樫。とにかく、まだまだ調べる事があるでしょう。まだ取材の序の口
ですよ。とにかく調べるのです。綾小路。富樫の言うように新聞は情報の垂れ流
しでは、私達は野次馬以下になってしまいます。
 特にあなたの担当は、何を伝えるべきかを確信できなければ報道できない事な
んですよ」

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