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●轟丈太郎(とどろき・じょうたろう)
 轟丈太郎はタクから聞いた「リリト」について調べるにも、タクの報告待ちに
なっていた。またYS製薬のガードが固いために、頭ごなしに力技でどうなるも
のでもない。
 そうして、喫茶ルナに戻ると、休業中だった。壁が何者かに破壊されたよう
で、壁を修復する従業員達がせっせと作業をしている。
「あのう、ここってどうなったんですか」
「さぁね、とりあえず、俺達は上からの指示でここを修復しているだけだから詳
しい事はわからないよ」
 ジョーは不吉な予感をしつつ、集合場所であった喫茶ルナが襲撃された形跡
がある。頼みのジンとも連絡が取れず、とりあえず、教会へ行く事にした。
 教会には、シスターともう一人の女性がいた。
 シスターは先日、教会を訪問した時にすれ違った女性だ。もう一人の女性は
ジョーとは初対面である。
「あら、先日、教会にいらした方ですね。すみません。牧師様は只今留守にし
ております。
 でも、私にできることでしたらなんでもいたしますわよ」
 真理逢はジョーに微笑みながらそういった。
「いえ、ちょっと教会で俺が役に立つ事なんか無いかなぁ。って思ってきたんで
すよ」
 ジョーの言葉に真理逢は目を輝かせ、天に向かって十字の印を切った後に
主に祈りを捧げた。
「主よ、感謝いたします」
「どうしたんすか?」
「いえ、教会を片付けようとしたのですが、いろいろと大変でして、私とエレンさ
んではとても運べないものなどがあったのです」
「力仕事ならまかせてよ☆」
 ジョーは無邪気な笑みを浮かべて教会の仕事を手伝う事にした。
「うひゃー、なにこの穴だらけの壁は」
「詳しい事は存じませんが、牧師様は、迷える子羊をかくまわれた時に、狼に
襲われたとか」
「ねぇ、シスター、落ち着くまで俺がここに住み込みで手伝いをしてかまわな
いかな?」
「まぁ、助かりますわ」
 というわけで、その瞬間、ジョーは教会の住み込みお手伝いとなった。
「すみませーん」
 教会の入り口から、女性の声が聞こえる。
「はい、なんでしょう?」
 真理逢が迎えに行くと、長い髪をみつあみにまとめた綾小路ゆうあが教会に
訪問した。
「マツドLD新聞社の綾小路ゆうあと申します」

●黒輝相馬(くろき・そうま)
 黒輝相馬と牧師は、対峙していた。
「どうしても諦められないのか?」
「ああ、だから黒輝、おまえのサイバー技術と、竜之介のAD技術を借りたい」
「残念だが、東郷は大空についたよ。いや、つかされた。というべきかな」
「なんだと…、っく、大空め、先手先手を打ってくる」
「それだけ、大空は先見の明があるってことだ。それに、東郷はBG-2179 TYPE
-βで既に満足しているしな…。YS製薬を敵に回してしまったのが間違いだと
思いな」
 黒輝はそう、牧師に言い捨てると、牧師は肩を下ろして部屋を出て行った。
「いいのか?」
 ベッドに横になっていたナイトがビショップに語りかける。
「ああ、あいつ、東郷、俺は神崎博士の弟子だったが、それ以上でもそれ以下
でもない。3人とも理念の根本が違うだけさ。
そうそう、奴が、おまえのターゲットの生みの親だよ。おまえのターゲットは、
教会の地下かこの地図にある闇サイバー医のところにいるだろうよ」
ナイトは何も言わず、黒輝の手にあった地図を受け取った。

●教会
教会。
 ジョーは住み込みで教会の手伝いをすることになり、真理逢とエレンは当然、
教会で時を過ごす。十六夜は教会のありさまをみて、お手伝いADとしてのプ
ログラムが騒ぎ、掃除の手伝いをすることにした。ゆうあは、忙しそうな教会
の人々をみて、取材の前に手伝いをしようと思ったらしく、成り行き上、手伝
っている。
「みなさ〜ん、お茶が入りましたよ〜」
 それは十六夜の声である。
「まぁ、そんな時間ですの?」
「適度な休息があった方が効率的な仕事ができるんですよ」
「あ、うまそう」
 ジョーは真っ先に席につく。その後に続くようにエレンとゆうあがやって来
た。
「そうそう、申し訳ありませんが聞きたいことがあるのです」
 ゆうあは、真理逢に言う。
と、その時、ジョーの携帯端末に通信が入り、会話が中断した。
「あ、ごめんね」といいつつ、ジョーは携帯端末を見る。
メッセージには、
>新しいボーカル候補見つかる。バンド活動復活の兆し有り。
「どうかされたのですか?」
「いや、なんでも…、とりあえず、いただきましょうよ」
「待ってください、皆さん。
 今日の糧を得られた、感謝の祈りがまだですよ。
 主は、私達の事をいつも見守ってくださっています。
 ですが、だからと言って、感謝の気持ちを忘れてはいけません。
 人の生くるはパンのみによるにあらず。です。
 さぁ、皆で祈りましょう」
 ジョーをはじめ、エレン、ゆうあ、十六夜は真理逢の発言にきょとんとし
ている。
「天にまします我らの父よ。
 われらに必要な糧を今日も与えてくださる事を
 感謝いたします。アーメン」
 真理逢の行動に対して、皆の反応が、キリスト教徒ではありえない反応であ
ることに気が付いて食事もそっちのけで、福音を授ける。
「皆さんも既にご存知のように、私達全ての人類は、罪を犯したアダムの子孫
です。
 天国と言う、完全体であるものしか、住むことの許されない場所で 主の教
えを破り、そして追放された、アダムの子孫であるがゆえに、生れ落ちたとき
から、罪人(不完全体)であるのです。
 しかし、天にましますわれらの父の子である、イエスが十字架にかけられた
事によって、われらの原罪である欠損部分が補われ、人間は、完全体になる
ことが出来たのです。
 私たちは、主の御心を受け入れる事だけで、天国へ行く資格を手にすること
が出来るようになったのです。
 『主の御心を受け入れる』ということは、そんなに難しいことではありませ
ん。
 主の教えを守り、いつも、主と対話をしながら生活を営んでいく事ただ、そ
れだけなのです」
 みなは真理逢のセリフに感心したのかそれとも、おっとりした真理逢の突然
の変貌に対応し切れなかったのか唖然として食事に手をつけた。

●真理逢(まりあ)
朝…誰もいない、礼拝堂に真理逢が入ってくる。そして、十字架の前に祈りを
捧げる。
「天にましますわれらの父よ。
 御名があがめられますように。
 御国がきますように。
 御こころの天になるごとく、地にもなりますように。
 わたしたちに必要な糧を、今日も与えてください。
 私たちが他人の罪を赦すごとくに、私たちの罪をもお許しください。
 私たちを試みにあわせず、悪より救い出してください。
 御国とちからと栄光とは、永遠にあなた様のものだからです。
 アーメン」

第5回へ

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