ホーム > 目次へ > 小説 > Sun Of Night
●矢島智樹
矢島は自室でコーヒーを飲みながら、事件の調査結果をまとめていた。
結局分からない事ばかり、容疑者も上がってこない。
分かった事と言えば被害者の共通点は血液型とYS製薬の息のかかった病院
に通院歴があること。
すると、マコトからメールが届いた。
「速いな」
矢島の口元がわずかに歪む。矢島は早速メールを開いた。
●小川真琴
マコトは、矢島という刑事から依頼された、YS製薬についての報告用のメ
ールをまとめていた。
・クローン技術
クローン人間の疑いがかけられるが証拠不十分で勝訴。
ただし、YS製薬の息のかかった病院では、臓器移植のドナーの名前はプラ
イバシー保護の為に公開されなかった。
・バイオソルジャー
YS製薬で不法にバイオソルジャーの生産を行い、それをスラム街に放し飼
いしているという、噂がある。実際、被害届が届いていないため、警察も動け
ないでいる。探偵ギルドで調べたところ、調査依頼されている行方不明者のほ
とんどは、何らかの理由でスラム街へ足を向けている。スラム街ではUNIT64
に管理されない流通がはびこっている為であるが、スラム街で殺された可
能性は強い。
・バイオサイバー
サイバーと異なり、サイバーの部品に様々な生物の肉体を使用するハーフサ
イバー、あるいはオールサイバーを指す。
まだ研究段階ではあるが、実験のため、スラム街より、無差別に誘拐してい
る黒服の男の集団が確認されている。この黒服の男達こそ、YS製薬の息のか
かったものではないかと言われている。
・ヴァーチャルヒューマン
「NET上にのみ、その存在を確保される」で、中央コンピュータの完全監制
下にある、ネット上にのみ精神体が残った存在である。しかし、YS製薬では
これをUNIT64に管理されないようにしているらしい。
また、ADにヴァーチャルヒューマンをインストールする実験もしているよ
うだ。
●工藤香子
工藤香子は、不機嫌な表情で、形の良い眉をしかめていた。先日現われたリ
リトが催眠術をかけてきたことについて考えていた。
実際、催眠術は強い暗示をかけることで対象を操れるということを指している。
催眠にも種類があり、自己暗示を用いて自分で自分を操る自己催眠と、何
らかの方法により、対象に催眠トランスという状況に立たせ、無意識の中に強
い暗示をかける他者催眠がある。
催眠トランスとは睡眠に近い状態、あるいは、無意識の働きが活発になって
いる状態を指す。
この催眠トランスという状態では、暗示をかけられた状態に対して、自分で
その事を疑うと言う事が出来ない。
それをある条件を満たす事で、かけられた暗示を反射的に行う後催眠ものと、
催眠をかけられた直後におこるものと分類されるが、リリトにかけられた催眠
は果たしてどちらなのだろうか?
そんな不安が香子の頭をよぎった。
(なにを考えているの。問題は黒輝とリリトの関係じゃない。なぜ、黒輝のこ
とを調べると、リリトが現われるか・・・)