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●神崎耀
神崎耀の気持ちは、行方不明の姉、神崎恵子の失踪で不安といらつきで満た
されていた。
そんな、耀を心配そうに、そっと横に座っているのは、花岬明子。
耀と明子は噴水のある公園のベンチに座っていた。
「おまえ、明子じゃないな」
耀はいきなり、となりにいる明子が、違う人間ではないだろうかと考え始
めた。
疑心暗鬼を生ずとはこの事で、先日対面した、猫に良く似た化け物と対話し
て以来、耀は妄想のとりこになっていた。それを吹き飛ばすためにバンドを始
めてみても、妄想は強くなるばかりだった。
「なにをいっているの?」
「おまえはこの前の化け物の仲間だな」
「・・・私は明子よ」
「あ、ごめん。いいすぎた」
耀は自分が言い過ぎたことを後悔し、明子に謝る。しばし沈黙が訪れる。二
人はどちらと言うわけでもなく、唇を重ねる。見詰め合う二人、再びおとずれ
る沈黙は、轟音によって破壊された。明子の胸に穴があく。次に頭、肩、再び
胸。
耀は後ろを振り返ると、闇にまぎれる影が見えた。
明子だった物は、血の変わりに、黒い液体が流れ、ショートしかけた機械が
はなつ、光がバチバチいっていた。
周りからは、黒服の男達が駆けつけ、耀を保護するかにように取り囲む。
「神崎耀様ですね。ご安心ください。あなたのお父様がお待ちです」
●ナイト
ナイトは闇サイバー医のところで張り込みをしていた。そこで、教会で会っ
た神父と同じ匂いにたどり着いた。
ナイトはそのままチャンスを待って、神父を尾行しつづけた。
ナイトは黒輝に連絡し、武器を持ってくるように要請する。
黒輝はしぶしぶナイトの要請を受け、アサルトライフルをナイトに渡した。
それを調達後、チャンスを狙ったのだが、神父は顔を変え、女性の姿に変え
て青年と待ち合わせをした。ターゲットは自らのボディーを変えることで変装
していたのだ。
ターゲットと青年は噴水のある公園のベンチに座っていた。
ナイトはまわりには自分のほかに複数のターゲットを尾行する存在に気が付
く。ターゲットか青年の尾行かは判断がつかないが、ナイトはチャンスを待つ
しかなかった。
尾行する存在は定期的に連絡を取り合っている。彼ら全員の集中力が切れた
瞬間を狙うしかない。
そして、狙った瞬間がやって来た。二人の男女のラブシーンの後、尾行して
いた存在がいっせいに注意をそらしたのだ。
ナイトの強化された五感はそれを察知した。一瞬、自分を助けたシスターの
顔が頭を横切った。
(なにを余計な事考えているんだ)
ナイトは自答自問しながら4発の弾丸をターゲットに放った。致命傷だ。
それを確認した後、ナイトはすかさずその場を去った。
ナイトは任務完了後、ひどい頭痛を感じた。不本意だが黒輝のトコロへ行った。
「ああ、体の方は、薬漬けってこと以外は異常は無い。珍しいな。極度のスト
レスによる頭痛だ」
黒輝は何事も無いようにナイトに答えた。
●教会
教会には、先日のトラブルでの宣伝効果が抜群にあったらしく、教会にはあ
ふれるほどの人が集まった。
さらに、ゆうあが特集を組んだ電子新聞の申し出により、LDのビューアネ
ットワークを通じて生中継されることも決定した。
「すごいぜ、シスター。人があふれ返っている」
ジョーが無邪気な笑顔を浮かべながら真理逢に言う。
「まぁ、日曜学校にこんなに出席いただけるなんて。主の思し召しですわ」
教会でのチャリティーライブが今、まさに始まろうとしていた。