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●ナイト
 ナイトが部屋に入ると、廃棄寸前のADが倒れ、右腕が使用不可能に
なったADと会話していた。飛鳥と十六夜である。
 そして、部屋の奥にはターゲットである、大空鷹衛を発見した。
「ターゲット発見」
 ナイトは無機的な声で呟くと、幽霊のように、ふわりと跳ぶと大空の
目の前に着地した。ナイトはそのまま大空に殴りかかるが、拳を止め、
バクテンをして後ろへ下がる。
 ゴゥ。
 ナイトがいた場所に何かが空を切る音がする。
「よくかわしましたね。それにしても、人間とは思えない動きです。リ
ミッターが解除されていなければ、間に合わなかったかもしれません」
 いつのまにか、そこには十六夜がいた。十六夜はナイトの侵入を確認
するやいなや、すぐさまナイトの動きから、着地地点を算出し、移動と
同時に攻撃を加えたのだが、空を切ったのだ。
 十六夜とナイトはにらみ合う。ナイトはボクシングの構えをし、両手
の拳にはメリケンサックがはめられており、その先端は鋭く尖り、薄く
光っている。
 高周波ナックル。このナックルによる打撃で、鋼鉄もバターのように
溶けてしまうという凶器である。
「ナイト! おまえのターゲットは、このキングである私だ! そこの
ADは関係ない」
 大空が張り裂けんばかりの声で怒鳴る
「そのとおりだ。キング。だが、任務を妨害する傷害は速やかに破壊す
る」
 ナイトはそういうと同時に、その構えのまま、上半身を軽く振りなが
ら、ジグザグにステップを踏み、十六夜に近づく。
 十六夜のMCTUは、ナイトの動きを予測して、回避行動に移るのだ
が、その回避行動が裏目に出た。
 ナイトは、回避行動に移った後に、十六夜の動きを知覚し、パンチを
繰り出したのだ。
 そのスピードはまさしく人間技を越え、十六夜のレスポンス能力も超
えていた。
 バシュゥゥゥ。
 ADの心臓部がショートする音が部屋に響く。
 ナイトの繰り出した打撃の犠牲は、ナイトに覆い被さるように倒れこ
む。
「イマダ、いざよい。オオゾラヲツレテニゲロ」
 電子音で作り出した声がナイトに覆い被さるADから発せられる。
「飛鳥・・・」
「ハヤク、ネエサン」
 十六夜は大空を脇に抱え込み、窓ガラスを破り60階から飛び降りる。
 ナイトは、十六夜と大空の生死を確認するため窓まで走り、下を覗き
込む。
 ナイトが目にしたものは、パラシュートでゆっくりと降りてゆく、十
六夜と大空の姿だった。
 
●小川 真琴
 小川真琴は、自分の探偵事務所に矢島智樹を連れてきた。
 事務所の中は雑然としており、数台の端末が並べてある。

「自分の城に、部外者を連れてくるのは、不本意だけど、外部に情報が
漏れるとまずいんでね」
 マコトはそういうと、ウィンクをする。
「で、大空と神埼は同一人物だったのか?」
「うん。そうだともいえるし、違うともいえる。遺伝子レベルでは同一
人物。でも、3年前、大空と神崎は公式の場で会見している」
「まさか・・・」
「そのまさか。遺伝子レベルで同一人物なのに、二人いるとなれば、ク
ローン人間としか言い様が無いね」
「そうか・・・となれば、どっちがオリジナルなんだ?
 大体、二人の目的はいったい・・・」
『LDD計画よ・・・』
 事務所にある端末が一斉に青白い光を放ち、起動し始め、一人の女性
の姿が映し出される。
「リリト? リリトか?」
 マコトはタクの警告を思い出す。
>W リリトには気をつけろ。
『そう、私はリリト。LDD計画は、AT−0023のさえずりによって発動され
たわ。リリスは完全体となって、UNIT64に立ち向かい・・・敗れた。
 LDD計画は失敗したの。私の存在価値は、神崎恵子に私の存在をコ
ピーすることで終わったの。私は誰? この気持ちを分かってくれる?』
「そんなの分からないよ」
『分からせてあげる。あなたに私をコピーすることで。私とあなたが一
つになることで・・・』
 リリトは端末の画面から、催眠術をかける。
 バン、バン、バン
 事務所に銃声が鳴り響く。
 端末の画面に映るリリトは断末魔を上げて消えてゆく。それは、リリ
トにとって死を意味するように・・・。
 矢島の手には拳銃が握られ、拳銃からは白い煙が吹いていた。
「ありゃりゃ、仕事の道具が・・・」
「ふん、あのままだったら、そんなことを言ってられなかったろう?
 これで、報酬はチャラだ」
 矢島の言葉にマコトは口を尖らせる。
「ただ働きさせて、変な事件に巻きませておいて言う台詞?」
「すまんな、今後の生活は退職金しかないんでな。それより、他には情
報はないのか。命の恩人が聞いているんだぞ」
「やれやれ、事務所がこんなんじゃ、仕事が出来ないから連れて行って
あげるよ。
 黒輝相馬、神崎博史の弟子の中で唯一所在が知れている男だよ」

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