ムーンティア・エクセリオンは、4枚の絵画という奇妙な共通点があることに首をかしげていた。
さらにいえば、夢の中に出てきた4枚の絵画がとても気になった理由に、今、気がついた。ティアは、4枚の絵画はジャール・デミアスの作風がなぜか重なっていたからこそ、絵画の事が気になっていたのだ。
一方、シン・マーヴェリックといえば、腕くみをして、「う〜ん」と何度か繰り返しながら、態度はティアとは違うが、ティアと似たような事を考えているようだ。
シャウティー・ラウケマップは、おっとりと二人を見て「どうしました?」と交互に質問した。
ティアとシンは、シャウティーの質問に応える事は無かった。
そして、シャウティーは、2人の回答を待ちながら、3人はしばしの沈黙のときが過ぎた。
「あ、そうだ、俺、用事があったんだ」
シンは何かを思い出したかのように、ポンを手を打つ。そして、2人に別れを告げつつ、言葉をつなげる。「そうそう、シャウティー、機会があったら調べておくよ」
ティアはシンの態度を見ていつもとちがって変だとは思った。
しか、今はシンよりジャールの作品を持つ少年と、シャウティーの話の中の少年が同一人物かどうかと言うことの方が気になっていた。
この時、シンとティアは互いに何か隠し事をしているようには感じた。
しかし、お互い、隠し事など星の数ほどあるのが人間関係である。
人は、隠し事があるがゆえに、嘘をつく。
もちろん、突き通せる嘘なら、相手の信頼を損なわないが、本来なら、真実を語るに越したことはない。
そもそも、嘘とは、事実を曲げで作り出したものだからだ。
つまり、本当ではないことであると同時に、誤りであり、間違いだからこそ、嘘を突き通す事は難しいものなのだ。
それに対して、正しいものを、押し通すことはごく、シンプルで簡単だ。
そんなことは、誰でも知っている。
ティアもシンも例外ではないし、むしろ、通常の人よりも、ティアもシンも、お互い正直である。
だた、それでも、相手には知られたくない隠し事と言うものは存在する。
嘘が間違いである以上、絶対矛盾は生じる事は知っている。
いずればれるであろう、その場しのぎの嘘かもしれない。
だが、人は、人であるがゆえに、それでも嘘をついてしまうものなのである。
そして、嘘が嘘である事を隠すために、さらに嘘を重ねる。
真実において、矛盾は生じない。
できることなら、真実を語り続けたい。なぜなら、真実は、いつか理解してもらい信頼してもらえるからだ。
だが、嘘を語る人の言葉は、嘘が発覚し、そこから信頼が失われてしまう。
人は、無数の星の嘘や隠し事があってでも、たった一つの信頼という名の月があれば、暗闇の夜を肩を並べて歩くことが出来る。
そんな2人を目をぱちくりして交互に見るシャウティー。そしてシンはその場を立ち去った。
「シャウティーさん。
あの男の子はもう見失ってしまったけれど、また明日ここで一緒に探さない?」
とりこされたティアは、シャウティーに提案してみる。
「ええ、そうですね。
でも、私は念の為に、もう少し探してみます」
シャウティーは微笑みながらうなづいた。
「そう、わかった。
そうだ、自己紹介がまだだったね。
僕の名前はティア。ムーンティア・エクセリオン。
そして、さっきの奴がシン。
シャウティーさんシンには気を付けなよ。
シンは、とボケているけど、すっごい女ったらしなんだ」
ティアは苦笑しながら、シャウティーに警告する。
シンが女ったらしかどうかといえば、性格上そうではない。むしろ、相手が女性であろうが、男性であろうが同じ態度である。
だが、相手が困っていれば、全力で手助けをする。
それが、シンであり、性別に関係なく、そうした人間に行為を寄せるのは、至極当然であるだろう。
誰しも、自分に全力で手助けをする人間に好感をもつのは自然なことだ。
内心、ティアは、どうにもそれがイライラしていた。
もちろん、困った人を助けるのは良い事である。
鈍感ではあるが、シンのいいところである。
だが、ティアは、自分では、よく判らないがそれがイライラして、ついついシンに怒りを感じてしまうのだ。
実際、ティアはシャウティーに、シンが女ったらしであると述べた事に、若干後悔の念を覚えつつ、どこかイライラがすっきりしたところがある。
シャウティーといえば、ティアの気持ちを察したのが、「はい」と、頷きながらシャウティーは女ったらしとはどんな意味なのだろうと首を傾げた。
そうしてシャウティーとティアは、明日、この商人の広場で待ち合わせの約束をして、別れを告げた。
太陽は、朝と言うには天高く、昼と言うにはまだしばし時間があった・・・。
呟き尾形 2005年5月1日 アップ
呟き尾形 2011年9月11日 修正
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