●再び白き雌鹿亭
「いらっしゃい・・・・っと、ティアとパッセルか。何しけた顔してるんだ?」
ティアとパッセルとシャウティーは、白き雌鹿亭に入ると、ニコニコした白き雌鹿亭の主人がいた。
主人は少しだけ考えるとぽんと手を打ち、ティアとパッセルに甘い蜂蜜水を出した。「これはおごりだ」と言ってウィンクする。
ティアは何となくこの酒場の主人の笑顔を見ているととても安心できるような気がした。彼に相談すればすべてを解決してくれるのではなか? 実際、パッセルも彼を信頼しているし、あの秘密も知っている。良く考えてみればシンに頼るのはシャクだし、いっそ白き雌鹿亭の主人に頼ってみようか、そんな風にすら思わせた。とはいいつつも、遠慮深いとはいいがたいティアであっても、それは図々しすぎるような気がした。
ティアは、そんな風に考えながら蜂蜜水をすすりると、酒場の主人はティアとパッセルを満足そうに見た。そして、酒場の主人は、視線でシャウティーは何が良いか無言で注文を促す。シャウティーはキョロキョロして迷ったあげく注文する。
「えっと、ティアさん達と同じ物を」
コテ!
てっきり酒を頼むとばかり思っていた白き雌鹿亭の親父はずっこける。酒場に来て、酒を頼まないとは冷やかしだろうか? と酒場の親父はシャウティーを見るが悪気は無いと判断した。
シャウティーはなぜそんな反応をするのか分からなかった。実際、これまで田舎の村で神官になるための修行を続けてきたわけだから、しょうがないと言えばしょうがない反応だっかかも知れない。
「ねぇ、シンは?」
ティアは空になったコップを大事そうに両手で持ちながら白き雌鹿亭の親父に尋ねる。
「シンの奴はちょっと前に出て行いったよ」
「あ、そうなんだ」ティアは白き雌鹿亭の親父に言うでもなくそう呟いた。
「ねぇ、ティアはどうして、あの人と旅をしているの?」パッセルは唐突にティアに素朴な疑問を投げかけ、言葉をつないだ「一緒に旅をしてるのに、同じ仕事をしてるわけじゃないし、兄弟と言うには似てないし・・・・」
「シンとは兄弟じゃないよ」ティアは質問の回答をしたあと、ちょっと首をかしげ、そして、再び口をひらいた「う〜ん、目的が同じと言うかなんというか・・・でも、確かに、なんで一緒に旅をしているんだろう? だらしないし、優柔不断で、お人よしだし、まぁ、嘘を着かないのはいいところだけど、良いところと言ったら・・・・なんにもない・・・・なんでかわかんないや」
パッセルはティアの最後のにこやかな表情で言うのティアをじっとパッセルを見る。ティアはパッセルの視線をかわすように目をそらす。
「ねぇ、ティア。この街に住む気、無い? だって、旅も楽じゃないし、シンって人と旅をしてる理由も特になさそうだし・・・・」
「え?」戸惑いつつ問い返すように言うティア。
「あ、何でもないよ! 僕たちはシンを捜してるんだよね。とにかく捜そう!」
パッセルはティアの反応を見て、自分でそんなことをなぜ言ったのだろうと一瞬だけ後悔すると、ティアの手を引っ張って白き雌鹿亭を出た。
呟き尾形 2006年8月27日 アップ
呟き尾形 2014年6月22日 修正
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