●娼婦宿
シン・マーベリックは燃える昼の輝きの火を消す。
(なんてことだ、また絵画が燃えたなんて・・・
悪魔の話は信じられないけれど、こう常識では考えられないことばかり起こると、アルクィンの話を信じなければいけないかな)
シンは自分の得た情報を整理してみる。
・『展覧会の絵』に描かれていた絵によく似た神官が白き雌鹿亭で酒場の親父と何か交渉していた。
・展覧会の絵と呼ばれる絵画はフォルスという魔法使いが悪魔を封じるためとアルクィンに描かせた絵である。
・同じく展覧会の絵と呼ばれる宝飾品はフォルスがジャールに頼んで創らせた物らしい。
つまり、この絵が何かのキーになっているようだとシンは推理する。
そして、おそらくは、絵は、悪魔を封印している媒体で、絵が燃えるということは、悪魔の封印が解けていることをいみしているのだろう。
問題は、封印を解こうとしているのは誰であるかだ。
ジャールがつくった宝飾品が封印のカギになるのかもしれない。
「シン、何を考え込んでるのさ?」
ジョアンナがシンに問う。
「あ、俺、やらなくちゃいけないことがあるから」
シンはそう言って、逃げるように娼婦宿を出て行った走り出した。
「やれやれ、いそがしいねぇ。目の前のことしか考えられない馬鹿はこまったもんだ。
まぁ、そういう一生懸命なところがシンのいいところってことか。
でも、あれじゃ、ティアもむくわれないね」
ジョアンナはニヤニヤしながら、娼婦宿を後にした。
●白き雌鹿亭
ムーンティア・エクセリオンは白き雌鹿亭で、歌を歌っていた。
シンを待つことは慣れている。
シンはいつも、ティアを置き去りにして事件に首を突っ込んでいた。
そして、いつも後から話を聞く。
(多分、今回もそうなんだろうな)
そんなさみしい思いを紛らわすためにティアは、吟遊詩人として、白き雌鹿亭で歌を歌った。
「あのう、ティアさん」
シャウティーが白き雌鹿亭に入るなりそう言った。
「シャウティー。どうしたの?」
「実はちょっとご相談が」
「相談? 僕に?」
ティアはきょとんとそう言った後、嬉しそうににっこり笑った。
●神殿
「あ〜つまり、君はゾンビが街にやってくる。そう言いたいわけだね」
シャウティーとティアは、神殿の人間にゾンビが来るので警告をするために神殿に訪れた。
しかし、女性二人は、門前払いと言わんばかりに番兵から抑揚のない事務的な答えが返ってくる。
「とにかく神官様につないで下さい」とシャウティー。
「そうだよ、話だけでもきいてよ」とティア。
「だめだね」番兵は即答し、言葉を続ける「今、神官様はロレンツォ様のお屋敷に行っていて、留守だ」
「ダメだシャウティー。他を当たろうよ」
ティアは番兵の態度に見切りを付けてシャウティーに耳打ちをする。
シャウティーは後ろ髪を引かれるように神殿を去ろうとしたとき、彼女達を呼び止める声がする。
「まちな」
「あなたは・・・・」
「おれは、ジョン。しがない情報屋さ。
それよりもさっきの話は本当か?」
ジョンの問いに頷くシャウティー。
「わかった。
残念だが、ロレンツォの親父達はバルバロイという神官にいかれている。
とにかく、俺達ギルドのメンバーと何とかやってみよう」
ジョンは、シャウティーをまじまじと見てから、顔を隠すように少しうつむいてそういった。
ティアは、そのうつむく前の顔が赤らんだのをみのがさなかった。
「へぇ、そういうこと」
ジョンに対して言う。
シャウティーもジョンの手を取りジョンを応援するように言うとジョンはシャウティーの手を払いのける。
その様子を見ていたティアはニヤニヤしていた。
「私は嫌われているのでしょうか?」
シャウティーはティアに耳打ちするがティアは、ニヤニヤするだけで、「さぁ〜ね」とだけ応え、そのまま商いの広場に向かった。
呟き尾形 2008年11月16日 アップ
呟き尾形 2014年8月15日 修正
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