●商いの広場
ムーンティア・エクセリオンとシャウティー・ラウケマップは、情報屋のジョンに話を終えた後、白き雌鹿亭にいるであろうシン・マーベリックの助けを求めるために商いの広場を通って近道を歩いていた。
ティアは、猫のように気まぐれなシンがなんとなく、今日に限っては白き雌鹿亭にいるように思えたのだ。
ティアは白き雌鹿亭にいるとは見当を付けたものの少々自信がない。
「ねぇ、シャウティー、シンのいるところなんだけど・・・」
「シンさんは白き雌鹿亭にいると想います。
なぜかは分かりませんがそんな気がするんです」
おもむろにシャウティーが言う。
「ふしぎだね。僕もそう思えるんだ」
ティアの予想は確信に変わった。
そしてティアとシャウティーとジョアンナは白き雌鹿亭に向かった。
●白き雌鹿亭
ティアとシャウティーとジョアンナが白き雌鹿亭に向かっている頃、
シンは白き雌鹿亭についていた。
「ティアは帰ってきたかい?」
シンは酒場の親父に質問する。
「ああ、なんだかお前のことをずっと捜していたみだいだぜ」
親父は落ち着いた様子だったが、それは装っているだけにすぎないとシンは見抜いた。旅を続けていると、話す相手の様子を観察する癖がついているのだ。
「ねぇ、この前、神官があんたのこと"バハトゥーン"と呼んでいたよね?」
シンのあまりにも直接的な質問は、さすがの酒場の親父は目を見開く。落ち着いている酒場の親父は動揺しているようだ。
「悪いが、今は仕事中だ」
「仕事より大切なこと・・・あるんじゃない?」
シンのまっすぐな眼差しは白き雌鹿亭の主人を突き刺すようにじっと見つめている。
「・・・・分かったよ、シン。
俺はお前の事を気に入っているし信用もしている。
お前を巻き込んでしまったことも悪いと思っている。だが、どうしようもないことなんだ。
俺の名前はあの神官が言ったようにバハトゥーン。
10年前の悪魔退治をした戦士だ。
俺はフォルスとバルバロイを引き連れて悪魔を倒すために北の洞窟に向かった。
だが、俺達は悪魔に勝てなかった。
あの悪魔は俺達を殺す気になればいつでも殺せたが、俺達の恐怖をむさぼり喰うように、恐ろしい幻覚を見せた。
俺達が悪魔が俺達の魂を食らおうとしたとき、奇跡が起きた。
いや、その奇跡はフォルスとバルバロイがあらかじめ仕組んでいたのかも知れない。
女神が現れたんだ。
女神が俺達を幻覚から救ってくれると、バルバロイが、フォルスは4つの宝石を用意して呪文を唱えたんだ。
その間、悪魔は俺に何か呪詛をかけたのだが、バルバロイが俺をかばい、その呪詛を受けた。
そして悪魔はまもなく宝石に吸い込まれるように消えてしまった。そしてフォルスは信じられないことに女神にも同じ魔法をかけた。女神もまた悪魔と同じようにその宝石に吸い込まれてしまったんだ。
たぶん、女神の捨て身の行動だったんだとは思う。
それに、フォルスが言うには悪魔の力を押さえるためには女神の力を借りなければいけなかったらしい。
そして、フォルスはそのまま1週間ほど姿をくらまし、それ以来塔に引きこもった。
バルバロイは悪魔の呪詛のせいで狂人と化していた。そして1カ月ほどしてからこの街から逃げていった。
俺は苦楽を共にした仲間を失い落ち込んでいるとき、ジョアンナが一度この街を去り、別人として戻って、この白き雌鹿亭をやるように進められたんだ。
多分おまえさんは俺の名をかたる戦士に襲われたはずだ。
おまえさんは、あの悪魔に選ばれたのさ」
呟き尾形 2010年10月10日 アップ
呟き尾形 2014年8月30日 修正
呟き尾形 2015年1月4日 修正
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