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英雄の為の序曲
 子供たちの狂詩曲 3

 

プエルギガス年代記 子供たちの狂詩曲 3

 もともと、ケオティッカ帝国に来る前のトルファンでも、保
守的な民族性もあって、旅人。というだけで、排他的な扱いは
受けていた為、自然と慣れてしまっていたのかもしれない。
 しかし、カーズとジルォンがこのケオティッカ帝国の西の果
てのこの村のリージャは違った。
 もっとも、リージャ以外の村人は他のケオティッカ人とそれ
ほど大差はなかった。
 カーズはそんなリージャのことは好きだった。だから、リー
ジャとジルォンが両親になればといつも考えていた。
 実際、3日も同じところにいないジルォンは今日で10日目
になる。もちろん、村長から受けた仕事が長引いているだけの
話なのだが、カーズはこれほど同じところに
いたのは初めてだった。
 ぼんやりリージャの後をついて行くカーズの足元がつかまれ
るような感覚に襲われ高と思うと、カーズはそのまま足をすく
われる。
「アーリア人。いつも、リージャの後をついてくる弱虫め!」
 カーズを転ぶ姿を指差してなじる声がする。声の主は、カー
ズと同い年のゲオルギーであり、その傍らには小柄な少年、グ
フタスがいた。
「ゲオルギー! グフタスまで! いたずらに魔法を使うなん
て」
 リージャは、両手を腰にあてて二人の少年を叱り付けた。
「へへん、おいらは知っているんだ。大人はみんな、アーリア
人のよそ者を追い出したがっているのを」
 ゲオルギーが胸を張って、自分の行為を正当化する。その傍
らのグフタスはにやけながら「僕もパパとママから聞いたもん
ね」と付け加えた。
「こんのぉ!」
 カーズはゲオルギーとグフタスを睨みつけると、その迫力に
グフタスは身を縮め、ゲオルギーはかろうじてその場に立って
いた。
 カーズは、同い年とはいえ、自分よりも頭一つ分大きなゲオ
ルギーに飛び掛った。
 ゲオルギーは持ち前の力でそれを受け止めるが、カーズはす
かさずゲオルギーのわき腹を蹴り上げた。旅をしている間に、
人の体の急所や戦い方はジルォンから叩き込まれている。
 ゲオルギーがひるむとそのまま足を払い転んだゲオルギーに
馬乗りになってゲオルギーを殴りつけた。
「う、うぇぇぇ〜ん」
 痛みに耐えられず、ゲオルギーは大声で泣き出す。
 リージャはその様子をみて、どちらをしかりつけるべき
かオロオロしている。
 最初に仕掛けたのはゲオルギーとグフタスだが、見た目に
はカーズが悪いようにも見える。
しかし、カーズとしては仕掛けられたことに対する報復だ。
 もともと、温厚でゆったりとしているリージャに対応を求
めるには、少々酷な状況だろう。
 と、そんなとき、小さな影がリージャの反対側から現れた。
「やめなさい! カーズ!」怒声とともに、カーズの体が吹
き飛んだ。


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