英雄の為の序曲
序章 初老の男性は、連なる武官を前にして軍議をしていた。 軍議に参加するのは、将軍の印を持つ武官12人と1人の男性。 彼らはいわゆる、セレジア帝国の12翼将と開祖とその息子である。 彼らは、混沌の勢力との決戦に向けての軍議をしていたのである。 開祖は、武官たちの意見を耳を傾け、沈黙を保っていたが、彼らの話を聞き終えると乾いた唇を開いた。 「これは人類と魔族の戦いではない。 心の強きものと心の弱きものの戦いである。 正義は心の強きものに宿る」 初老の男性は12翼将と息子に向かって言う。 12人の武官は無言ではあるが、開祖の言葉に士気を上げ、その気持ちを自制していた。 そんな中、不意に背後にいた、息子が剣を抜き放つ。 誰もが、開祖の息子の行動が理解できなかった。 開祖の息子は、抜き放つ剣を大きく振りかぶり、自らの父である開祖に振り下ろした。 さすがに歴戦の勇者であるはずの、12人の武官は、目の前で何が起こったのか理解するのに数瞬の時を要した。 それだけ、ありえないはずのことが目の前で起こったということを示していた。 「ふははは」 息子の声は人間のものとは思えぬ地獄の業火が燃え上がるような笑い声を発していた。 それは、初老の男性の息子が、あろうことか魔族であるアリエ人に憑依されていることを示していた。 「見たか。 人間よ。 この決戦に、お前たちがもっとも必要とする存在を斬って伏せた。 汝ら、心の強きとやらを見せてもらおうぞ!」 そういって、初老の男の息子は糸の切れた操り人形のように崩れ去った。 12人の武官は動揺の色は隠せない。 「うろたえるな! 余はまだ健在だ!」 自らの鮮血にまみれた初老の男が剣を杖代わりに立ち上がる。 「最後の命令だ! 正義は将校が自らの任務を果たすことを望む。 以上だ!」 初老の男は、言い終えるとそのまま瞼を閉じた。 |
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