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小説を書こう!
第12回
 投稿小説 ポケットの中のアルタイル 第1回

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボォン ジョルノ、こんにちわ。クニークルスです。
「こんにちわ。みなさん。ムーシコスです」
「今回は、さて、今回は、投稿小説を掲載します。全4回で、予定では週間
で発行予定です。」
 物語とは何ぞや? については、取材中ということで、ちょっとお休み
です。
「結構、難しいテーマだものね」
「投稿していただいた方は、いるまがわさん。
 ジャンルはファンタジー風児童小説。ちょっと見ないジャンルだね。それ
だけに興味深いな」
 それじゃ、ポケットの中のアルタイルの全4回の第1回。はじまりはじま
りぃ〜。

 作者名:いるまがわ
 ジャンル:ファンタジー風児童小説
 メールアドレス:irumagawa@hotmail.com
 小説の題名:ポケットの中のアルタイル(第1回)

 その日、ぼくは草の上にねころんで太陽をみていた。太陽はぼんやりとして
いて、暑くもないし寒くもない。だのになんだか息苦しかった。いつものこと
だけれど。
「シドニーっ!」
 ぼくをよぶ声がきこえる。キャンベラだ。
 ゆっくりと体をおこすと、目のまえにそばかすだらけの女の子がいた。ひら
ひらのスカートにエプロン。そして、手にはバスケットをもっている。いつも
のように。
「あんた、またちこくして、学校さぼる気ね。」
 そのとおり。ぼくはちこくしたら、学校は午後からときめている。でも、そ
ういうキャンベラはどうなんだ。
「あたしはリップルウッド先生にたのまれたのよ。あんたをむかえにいってこ
いって。」
 これは意外だった。リップルウッド先生は、ぼくなんか、いてもいなくても
気がつかないと思っていたから。
「また、天文学?」
「そうよ。ここんとこずっとそうじゃない。」
 リップルウッド先生は天文学にむちゅうで、国語や算数をほっぽりだして、
理科ばかり生徒におしえている。
 キャンベラが先生のものまねをはじめた。
「あ〜、太陽の運動も、ほしぼしの運行も、地球の自転によるのであ〜ります。
星には恒星と惑星があ〜りまして、太陽系内にある星を、惑星というのであ〜
ります。」
「あ〜恒星というのは、ひじょうに遠距離にあ〜ります。たとえば、りゅうこ
つ座のカノウプスなどは、百光年ものとおくで〜して、これは、光のはやさで、
百年かかる距離ということであ〜ります。」
 リップルウッド先生はいつものように、黒板に星のふくざつな運行図をかい
て、めがねをふきふき演説していた。まじめで年長の子はまえの席にすわり、
小さな子や、じゅぎょうなんかどうでもいいと思ってる子はうしろのほうにす
わっていた、これもいつものとおりだ。この学校は村じゅうの子どもがかよっ
ていて、ひとつの部屋でおしえられている。だから歳もみんな、ばらばらだ。
 ぼくはというと、一番うしろの席にすわり、やはりうしろの席のキャンベラ
をみていた。キャンベラは机のかげで、バスケットのふたをそーっとあけて、
なにかエサみたいなものを入れていた。バスケットの中にはキャンベラのペッ
トの小がもがはいっている。キャンベラは”おちびのグーちゃん”なんて呼ん
でいたけど、もうかなり大きくなっているはずだ。
 反対がわの席で、ごりごりとみょうな音がするので、ふりむいたらメルボル
ンだった。何をかんがえているかよくわからないヘンなやつ。目がみえないほ
どの長い髪に、ねぐせがにょきにょきと立っている。たぶん、ママがいないか
らだ。そのメルボルンも机にかくれて、なにか、粉みたいな、あやしいものを
つくっている。
「それ、なに?」
 ときくと、
「花火」
 とだけ、こたえた。
「あ〜月は天体の中でも、もっとも地球に近いわけであ〜りますがあ、それで
も四十万キロメートルもはなれていまあ〜す。月は地球の衛星であ〜りますか
らあ、じぶんではひかりません。太陽の光を反射して発光するのであ〜ります。
月の『みちかけ』は、太陽光のあたる角度によるのであ〜ります。」
 リップルウッド先生の授業はつづいた。

 その夜、台所でシチューをたべおわったぼくは、国語の書きとりをしていた。
パパは反対がわのイスにすわって、いつものように楽譜を読んでいた。五線譜
とオタマジャクシのならんだ紙をみても、ぼくにはちんぷんかんぷんだけど、
パパはそれがおもしろいんだ。
 ママがいった。
「えらいわねシドニー。」
「べつに。」
「でもママが子どものころは、勉強は学校でだけしていたわ。宿題もほとんど
出なかったし。」
「学校があてにならないから、家で書きとりしてるんだよ、ママ。リップルウ
ッド先生って、へんなじゅぎょうしかしないんだ。あの先生はだめだよ。まえ
の、マッキントッシュ先生のほうが、まだまともだったよ。」
 すると、ママはちょっとおこった。
「シドニー。子どもは先生のことをそんなふうにいうもんじゃないわ。」
 おとなはいつもこうだ。ママがキャンベラのお母さんと、リップルウッド先
生の悪口をいっていたのを、ぼくはしっている。国語や算数にねっしんじゃな
い先生はよくないって。
 壁にかけてある、ふくろうのかたちをした時計が、ほーほーとないた。ねる
時間になったんだ。きのうもおとといも、おなじ時間にふくろうはほーほーと
ないて、ぼくは二階のぼくの部屋へのかいだんをのぼった。何年もそうしてき
たように。
 ぼくの家は村のはずれにある。まどから村のまんなかのほうをみると、あか
い光やあおい光が、ぼーっとゆれて、ぼくはさそわれるように、まどのそとの
屋根の上にでた。空をみあげると、星がいっぱいにひろがっていた。まるで、
まるい天井のようにみえるけど、ほんとうは、ひとつひとつが、地球からちが
う距離にうかんでいるんだ。気がとおくなるほどの遠い距離に。
 でも、ぼくにはなんだか、もっとずっと近くにあるようにみえた。そう、手
をのばせばとどくくらい。
 とつぜん、ひゅんひゅんと、風をきる音がきこえたのでそっちをみると、と
なりの家の屋根のうえにキャンベラがいた。何かをふりまわしている。
「なにしてるんだ?」
 キャンベラは、ふわふわの髪をふりみだし、息をきらしてこっちをみた。手
にはなぜかつりざおをもっている。
「星をとろうとしてたのよ。」
「星?」
 ぼくはあっけにとられた。
「そうよ。さいしょは庭でとろうとしてたんだけど、それじゃむりだってこと
がわかって屋根にのぼったの。ああ、でもやっぱりだめみたいだわ。」
 ぼくはふきだしたくなるのをこらえた。ここでわらったら、あとがこわい。
でも、キャンベラはばかだ。
「リップルウッド先生のじゅぎょうをきいてないのかい? うんざりするほど、
宇宙の雄大さについてかたっているじゃないか。」
「でも、でも、あれって、すぐそこにあるように見えない?」
 といって、キャンベラは上を指さした。
 そのときだ。どんっとにぶい音がして、いっしゅん空があかるくなった。空
中でなにか光って、ぱらぱらと消えていった。ぼくは、すぐに、メルボルンの
やつだと思った。きっと、花火の実験をしているんだ。なんの音かと、おとな
が数人、そとにでてきたけれど、ちょっとうろうろしただけで、それぞれの家
にもどっていった。

★★★
「なんだか、ちょっと主人公、好感持てないな。現実的過ぎて夢が無くて」
 まぁまぁ。
 それにしても、さすが児童小説。というだけあって、ひらがなとか、描写も
分かりやすいよね。
「そうだよね。なんというや、やんわり小説のシーンがイメージできて」
『それにさりげない、授業のシーンなんかもいい感じでした。
 さりげない描写がいいですねぇ』
 あ、シニョール呟き尾形、取材はどうした?
『いやいや、これがまた難しくてねぇ。最初はサラリと言おうかと思ったの
ですが、考えれば考えるほど、味が出てくるテーマでして。
 小説を書こう!のMLやネットサーフィンをして話し合ったり、調べたりし
ています。
 それにテーマは物語、実際、物語に触れないといけませんからね』
「なんかただいいような言いくるめられたような」
 細かいところは気にしない。それじゃ、 アルデベルチ! 



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