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小説を書こう!
第13回
 投稿小説 ポケットの中のアルタイル 第2回

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボォン ジョルノ、こんにちわ。クニークルスです。
「こんにちわ。みなさん。ムーシコスです」
「今回は、さて、今回は、投稿小説を掲載します。全4回で、予定では週間
で発行予定です。」
 物語とは何ぞや? については、取材中ということで、ちょっとお休み
です。
「結構、難しいテーマだものね」
「投稿していただいた方は、いるまがわさん。
 ジャンルはファンタジー風児童小説。ちょっと見ないジャンルだね。それ
だけに興味深いな」
 それじゃ、ポケットの中のアルタイルの全4回の第2回。はじまりはじま
りぃ〜。

 作者名:いるまがわ
 ジャンル:ファンタジー風児童小説
 メールアドレス:irumagawa@hotmail.com
 小説の題名:ポケットの中のアルタイル(第2回)

 日曜日、ぼくはおもちゃの弓矢をもって、外にでた。この弓矢はぼくの手づ
くりだった。何年かまえ、まだナイフの使い方もへたくそだったころ、苦労し
てつくったものだ。
 いつものように、木の枝とか、塀にかいたまとをねらっていたが、すぐにあ
きてしまった。それで、ふと、上をむいて太陽をねらってみた。矢はねらいど
おりに上昇し、すみやかにおちてきた。あたりまえだ。
 けれども、ぼくはなんだか面白くなかった。
 矢をひろいあげると、ぼくはこんどはいっぱいに弓をひきしぼり、全力で太
陽をねらいうった。矢はたかくたかく上昇したが、それだけだった。重力には
さからえず、やはりむなしく落下してきた。
 もういちど矢をひろい上げたとき、キャンベラがあらわれた。にたあっとわ
らっている。しまった、見られていたか。いちばん、まずいやつに。キャンベ
ラは皮肉もいわず、ただ、「ちっちっちっ」っと、指をふり、
「だからあんたは子どもなのよ。」
 といって、先にたって歩きだした。
 ついていった先でみたものは、ぼくをあきれさせた。キャンベラは数日がか
りで、巨大な弓をつくっていたのだ。立木がYの字になっているところに、竹
でできたふとい弓が固定してある。それにおとなが両手をひろげたよりながい
矢が用意してあった。つくりはおそまつだが、とにかくでかい。
「星をうちおとそうとおもってつくったの。でも、子どもひとりじゃ弓をひけ
ないのよ。シドニー、あんた手伝ってちょうだい。」
「こんな太い竹じゃおとなでもひけないんじゃないか?」
「とにかく手伝って。」
 ふたりがかりで弓をひいてみたが、弓はびくともしなかった。全力でひっぱ
りつづけたら、しまいにぶつりと、つるのひもがきれてしまった。これにはが
っかりした。ぼくがおちこむ必要はない。ひけない弓をつくったキャンベラが
わるいのだ。でも、なんだか残念だった。
 そのときまた、どーん、ぱらぱらという花火の音がした。このあいだよりず
っと近い。みると、しげみのむこうに煙があがっていた。メルボルンにちがい
ない。
 はたしてかれは、煙のそばで、くろい粉とあかい粉をいじくっていた。よく
みると、煙は地中にたてた金属製の筒からゆらゆらとのぼっている。これが花
火の発射台というわけだ。
「やあ。」
 メルボルンはまったく悪びれることなく、ぼくたちにあいさつした。
「花火なの?」
「そう。」
 ぼくはきいてみた。
「こんな火薬とか、金属の筒とか、どこでみつけてくるんだい。」
 メルボルンはにがわらいした。
「裏山のむこうさ。」
「裏山ですって!」
 キャンベラがおどろいた。無理もない。あっちにはオオカミがうようよいる
というので、だれも近づかないのだ。
「べつにオオカミはいなかったよ。かわりにいろんなものがおちてた。たとえ
ばこれ。」
 メルボルンはチョッキの内ポケットから、りっぱなオイルライターを出して
みせた。そして、ちょっと火をつけると、一服するまねをした。
「油はじぶんでいれたんだ。これで花火に火をつけるのさ。」
「ふーん。」
 みればみるほど、たいした発射台だ。こんな金属のパイプは、村じゅうさが
してもないだろう。そのとき、ぼくのあたまにひらめくものがあった。
「花火で太い棒のようなものを、打ち上げられないかな?」
「棒?」
「いや、弓矢なんだけど……」
 キャンベラの顔がぱっとかがやき、電光石火でさっきの場所へ引きかえして
いった。あの大きな矢をもってくるつもりなんだろう。そして数十分後には、
ぼくらの発射台は準備がととのっていた。筒にさした矢のまわりにはつめもの
をして、爆発の圧力を逃がさないようにしてある。筒の底は地面の中だが、強
力な火薬をいれてあり、そこから導火線をのばして、地上へみちびいてあった。
「照準は?」
「太陽!」
 ぼくとキャンベラは、うしろの草むらのかげで声をそろえた。メルボルンは
お気に入りのライターで導火線に火をつけると、すばやくぼくたちのとなりに
逃げこんだ。一瞬のち、すごい音がして、あたりが煙につつまれた。
 視界がひらけてくると、発射台がかなりのダメージをうけているのがわかっ
た。金属筒は数メートルふっとび、あたりの地面がえぐれていた。上をみると、
そこには見なれた太陽があった。しかし、なにかトゲみたいなものがささって
いる。
 太陽はすこしづつ、トゲのところからくろい煙をだしはじめた。煙はしだい
にその量をまし、だれの目にもはっきりとわかるようになった。と、そのとき、
太陽は一直線に落下した。
 あたりはまっくらになった。
「落ちた! 見たでしょ、いまの。」
「村のむこうだ!」
「海じゃないか。」
 なにしろ真っ暗闇なので、ぼくらははうように、太陽をおいかけた。村にち
かづくと、すでに何軒もの家にあかりがついていた。おとなたちは、みんな外
にとびだし、くちぐちにわめきちらしている。
「この世のおわりだ!」
「何が起こったんだ、いったい!」
 すると聞きおぼえのある声がした。
「みなさん、おちついて、く〜ださい! これは日食という現象であ〜ります。
すぐに太陽は復活しますから! これは天文現象です。日食というのであ〜り
ます!」
 日食だって? これが? リップルウッド先生、なにをいってるんだ。太陽
はたしかに落下したはずだ。
 そのあとだった。東の空に日の出がおこり、太陽が飛び出した。それは猛ス
ピードで空をよこぎり、ついさっきまで自分がいた場所でぴたりと停止した。
「ほら、みなさん、日食はおわりましたよ! すぐにおわるんです。そういう
ものなのであ〜ります。」
 リップルウッド先生の顔がみえた。どこかでころんだらしく、めがねが割れ
ている。おとなたちは、やれやれという表情で、家にはいっていった。もちろ
ん、ぼくは釈然としなかった。

★★★
「え〜、いったいどうなったの!」
 いきなりぶっとぶ展開だね。
 描写を読む限りだと日食だとは思えない。
 だって、太陽は落ちて、またのぼったんでしょ?
 ふしぎだ。
「なんでだろう?」
『そうですね。この”ナンデだろう?”と読者に思わせる展開はとても素敵で
す』
 あ、シニョール呟き尾形、また。何だかんだいって、サボタージュしている
だけじゃないのか?
『まぁまぁ、細かいことは気にしない。それじゃ、あるでべるち(笑)』 





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