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小説を書こう!
第14回
 投稿小説 ポケットの中のアルタイル 第3回

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボォン ジョルノ、こんにちわ。クニークルスです。
「こんにちわ。みなさん。ムーシコスです」
「今回は、さて、今回は、投稿小説を掲載します。全4回で、予定では週間
で発行予定です。」
 物語とは何ぞや? については、取材中ということで、ちょっとお休み
です。
「結構、難しいテーマだものね」
「投稿していただいた方は、いるまがわさん。
 ジャンルはファンタジー風児童小説。ちょっと見ないジャンルだね。それ
だけに興味深いな」
 それじゃ、ポケットの中のアルタイルの全4回の第3回。はじまりはじま
りぃ〜。

 作者名:いるまがわ
 ジャンル:ファンタジー風児童小説
 メールアドレス:irumagawa@hotmail.com
 小説の題名:ポケットの中のアルタイル(第3回)

 海の上にうかべたボートの中で、ぼくたち三人は首をひねっていた。
 波はいつものように静かで、海中ふかくまでみることができた。そこには巨
大で気味の悪いものが沈んでいた。焼けこげたように黒っぽい、まるいものだ
った。触手のようなものまでみえる。たぶん、これが落下した太陽だ。突き刺
さった矢こそみえないけど、まちがいない。だけど――
「これが太陽なら、上にあるあれはなんなのよ。」
 疑わしいことばかりだ。キャンベラがぼくの気持ちをいってくれた。
「おかしいわよ。おかしいわよ。あたし、なにもかも信じられなくなってきた
わ。ここからみえる水平線だって、地球が丸いからじゃなく、ほんとははじっ
こが滝になってるんじゃない?」
 さすがにそれはないだろうと思ったが、メルボルンはじっと遠くをにらんで
いる。なにか考えているらしい。やがて太陽は――空の上の太陽だが――西の
ほうにかたむき、東から月がのぼってきた。それをみて、ぼくは背筋になにか
が走ったような気がした。
「太陽がいんちきなら、月はどうなんだ?」
「シドニー?」
「月だよ月。」
「ありうるな。」
 メルボルンがいった。
 この船の上でぼくはある計画を思いついた。それはかなりの準備を必要とす
るものだったが、ぼくたちは実行にうつした。
 まず、ロープが必要だった。村じゅうからロープをかきあつめた。作物の収
穫期だったら、そうはいかないが、いまならどこでもロープがあまっていた。
メルボルンはまた、山のむこうから使えそうなものをひろってきた。四本の鎌
をたばねたような形をしているおかしな金属だ。貝殻が付着していたから、昔
は水のなかにあったのかもしれない。これにロープをくくりつけて木の枝に投
げつけてみると、うまくひっかかった。発射台は、れんがで固められ、がんじ
ょうにつくりなおされた。矢のかわりに棒をけずり、先端にメルボルンがひろ
ってきた金属をがっちりと固定した。
 メルボルンは毎日毎日、ごりごりと火薬をつくっていた。ぼくとキャンベラ
は学校がおわると、長いロープにせっせと”こぶ”をつくるのに没頭した。す
べての準備がととのったとき、空には、三日月がうかんでいた。

 決行の夜、ぼくらは発射台のそばにあつまった。キャンベラのかかえている
バスケットの中の小がもが、「がー」とないた。
「そんなもの持ってくるなよ。」
「いやよ。この子はあたしといっしょよ。それにおなかがすいたときのため。」
「げっ。かもを食べるのか?」
 メルボルンがのけぞった。
「ちがうわよ。バスケットのなかに、パンとクッキーがはいっているの。」
 ぼくはロープのはしをそばの大木にくくりつけた。長さが足りるかわからな
いが、これがせいいっぱいだ。すでに発射台の用意はできている。ぼくとキャ
ンベラは大木のかげにかくれた。メルボルンはこのあいだのようにチョッキか
らライターをだし、導火線に火をつけてぼくらのそばに避難した。
 火薬の爆発とともに、にぶい発射音がした。このまえとちがって、こんどは
”棒”が空を飛んでいくのがみえる。こまかい火花をちらしながら、月にむか
って放物線をえがいていった。足もとのロープがしゅるしゅると減っていく。
ロープはどんどん減っていき、これまでか、と思ったとき、動きがとまった。
 あたったあたったとキャンベラがさわぎだした。
「ほんとうか?」
「ほんとうだ。月の中心の、かげの部分に命中したはずだ。」
 ぼくはそのことばを確かめるべく、ロープをひっぱった。ロープは空の闇の
中にきえていたが、手ごたえがあった。このロープは宇宙にうかんでいるはず
の月とつながっているのだ。ぼくはロープのあまりをふたたび大木にくくりつ
け、キャンベラとメルボルンをみた。
 キャンベラは目をかがやかせて、これからやろうとしていることに期待して
いる。メルボルンの表情はわからないが、めずらしく興奮しているようにみえ
た。
 まずぼくが、つづいてキャンベラ、最後にメルボルンがロープをのぼりはじ
めた。やってみると、これはたいへんなことだった。ロープにつけた”こぶ”
に手をかけ、からだをささえる。別のこぶに足をかけて、全身に力をいれて体
を引きあげる。これのくりかえしだった。しかし、しだいにこつをつかんでき
て、静かに、そして確実に上へとのぼっていった。
 ほんとうに静かな夜だった。下をみると、何軒かの家のやねと窓のあかりが
みえた。三人は無言でのぼりつづけ、ついには眼下に村の夜景がひろがるまで
になった。もう裏山なんかより、はるかに高くのぼっている。
「すこしやすもう。」
 とぼくはいった。
 下のキャンベラをみると、バスケットを口にくわえて奮闘している。静かな
わけだ。あれじゃ口がきけない。メルボルンもちゃんとついてきていた。
 キャンベラがなにかをみつけたらしく、バスケットを手に持ちかえてさけん
だ。
「海をみて!」
 それは海のはじだった。水平線とよんでいたものが、目の下にみえる。そち
らへ水が流れており、落下してしぶきが上がっていた。
「滝になってるわ……」



★★★
「つ、月に花火がささっちゃった。どうなってるの? ロープの先には一体なに
があるの?
 それに、なんていうか・・・中世以前の世界観が物語の中で目の当たりにして
いるようだよね?」
 なんだか、怪しい展開だね。この物語の中の世界が疑われるような・・・。
『そうですね。このように、主人公と一緒に、新しい何かが発見させるような展
開は素敵です。
 さりげない、月にロケットが命中した後のキャンベラとメルボンの描写が、読
者の気持ちをさらにひきつけていると思えます。
 あ、シニョール呟き尾形、またまた。原稿はできてるの?
『Σ( ̄□ ̄;・・・』
「・・・できてないみたいね」
『こ、細かいことは気にしない。それじゃ、あ、あるでべるち(汗)』 





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