ボォン ジョルノ、こんにちわ。クニークルスです。
「こんにちわ。みなさん。ムーシコスです」
「今回は、さて、今回は、投稿小説を掲載します。今回読みきりです」
投稿していただいた方は、土屋みかんさん。
ジャンルは短編。ジャンル分けに迷ったのかな」
それじゃ、「BLUE SKY」。はじまりはじまりぃ〜。
作者名:土屋みかん
ジャンル:短編
メールアドレス:fujiko3@spica.freemail.ne.jp
小説の題名:「BLUE SKY」
小説
リュウの弾くピアノの旋律が、私の疲れた脳にショパンを
柔らかく染みこませる。彼との心地良い時間。この穏やか
な曲をずっと聴いていたいのに、私はエリカに水を差しな
がら、いつ別れを切り出そうか考えている。傷つけるよう
な言葉は聞かせたくない。でもゴメンね、私はもう限界。
エリカの小さな花が水をはじいて、キラキラ輝いていた。
「あたしの息子を返してよッ!!」
真夜中の携帯から、悲鳴のような泣き声と、
激しい叫び声が延々と響く。
連日連夜、恨み憎む声が私を消耗させた。
「お母さん、ほんとに彼は私の所には来てないわ。」
「この嘘付き女!早く息子と代わりなさい!」
一体何度繰り返した問答だろう?携帯の音が鳴るたびに、
私は体をこわばらせる。
「あのババァ。もう、うんざりだ」
リュウは家にも自分のアパートにも寄りつかず、
友達の家を転々として母親から逃げていた。
彼の指が鍵盤から離れた。
私はまだ言葉を探している。
「どうかした?」
近付いてきたリュウが肩に触れて、キスをしようとする。
私はそれを避けた。
「リュウ、あのね。」
「ん?」彼はタバコに火をつけて私を見た。
「ごめん、私、今の自分を守るのが精一杯で、
リュウの人生を支えてあげられないよ...」
私の言葉に彼の大きな黒目が寂しく曇った。
「オフクロが何か言ってきた?」
私は眼を伏せた。
リュウは私の横に座ると、伸ばした膝の上で手を組み、
沈んだ声で話を続けた。
「考えたら俺、お前の側が一番居心地良くて甘えてたな。
その間お前はずっと我慢してくれてたんだろ?」
私は泣きたくなるのを我慢して下唇を噛んだ。
リュウは多分、行く先々の友達の家でも、
あのお母さんの電話に晒されてきただろう。
私は帰る家のないリュウの居場所でいたかったのに。
「俺さ、」
「...うん。」
「家帰るわ。」えっ?私は驚いて彼の顔を振りった。
彼はとても落ち着いた眼をしていた。
「逃げまわっててもどーにもならんし。また最初からやり直して、
オフクロ病院通いに連れてってみるわ。」
「大丈夫?」彼は以前、暴れるお母さんにお皿を投げつけられて、
縫う怪我をした筈だ。
「あぁ、平気。慣れてるから。オフクロの容体落ち着いたら、
お前に連絡する。今までサンキューな。」
「私に出来る事があったらいつでも言ってね?」
「あぁ。」彼の指先のタバコがギュッと灰皿に押し付けられて、
煙が消えていってしまうのを、私は悲しく見ていた。彼がタバコを
吸う仕草が好きだった。だった、と過去形で感じている自分が、
悲しかった。彼は私に弱音を吐いたりしないだろう。
彼は何かに対決するとなれば助けを必要としない潔い人だから。
「お前がいてくれて、俺は救われてたよ」
スクワレテイタ??本当にそうなら、どんなに良いだろう??
「何も出来なくてごめん」と泣いた私を、その晩ずっとリュウは
頭を抱いて撫でてくれていた。
私は知っていた。
彼がいい加減な男で母親を投げ出して逃げていたのではない事を。
一人で支え切れない重みに耐えかねて絶望していたのを。
今は私が彼を捨てて逃げ出そうとしている。
こんなにも優しいリュウを。
それから空しさと寂しさで塗り潰すような毎日が続いた。私は迷子
のようにすっかり道を失った。タバコばかり覚えて、人生の方向指
示器がうまく働かない。私は彼に何をしてあげられたんだろう?リ
ュウに会いたくてしかたなくって、彼の繋がらない携帯に祈るよう
な想いばかりが募った。
やがて季節は春になりつつあった。明るい陽光に桜のつぼみが膨ら
み始めていた。見上げる空が、青い。広がる空のどこまでも透明な
青さに、私は自分の弱さを捨てたくなった。強くなりたい。大事な
人を守れるように。少し痩せた体に、優しい風が穏やかに通り抜け
て行った。
暖かな春の空気を胸いっぱいに吸う。
(彼に会いに行ってみよう。)
私はリュウを、この恋を諦めたくない。
地上2000mの透けるような雲に、私はリュウのピアノの音を聴いた
気がした。
あとがき
季節感まるで無視なんですが(汗)
登場人物が少ないのにゴチャゴチャな感じが
我ながら下手すぎて泣けます...(涙)
★★★
「あ〜おもしろかった。でも、作者の土屋みかんさんもあとがきで書いて
あるけれど、ごちゃごちゃした感じがするね」
『そこが、「BLUE SKY」の長所であり、短所でもあるわけです』
「どういうこと?」
人の情緒というのは、理論だけでは語れなくて、複雑な感情はそもそも
ごちゃごちゃしているって事さ。
そのごちゃごちゃしているテーマを、主人公の感情と思考を通して表現
している。ってわけさ。その証拠に、主人公がとにかくリュウのことを、
いとおしく想っているんだなってことは、伝わってくるよね?
ムーシコス君。
「そうだね」
『小説であるにもかかわらず、詩のような情緒のある文章と、文章を構成
する段落や空白の行は、そういった雰囲気をかもし出していて良かったで
すね』
「こんな表現方法もあるんだね」
小説に決まった形はないからね。
それではアルデベルチ!
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