ホーム > 目次 > 小説を書こう! 

小説を書こう!
第37回
 投稿小説 ラルサとムアウ(第2回)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★

 

 ボォン ジョルノ、こんにちわ。クニークルスです。
「こんにちわ。みなさん。ムーシコスです」
『こんにちわ。呟き尾形です
「今回は、前回に引き続き、ラルサとムアウの全3回の第2回です」
 はじまりはじまりぃ〜。


 作者名:いるまがわ
 ジャンル:戦争童話
 メールアドレス:irumagawa@hotmail.com
 URL:http://www1.s-cat.ne.jp/irumagawa/
 小説の題名:ラルサとムアウ(第2回)

 村へ帰るとみな大喜びだった。
 ラルサの家にも食料が増えたし、新しく手に入れた女たちは、若い男たちの
あいだで取りあいになった。
 ラルサの母もなぐられずにすんだ。
 それからというもの、ラルサたち、村の戦士が戦いに出ると、いつもおおき
なえものを持って帰ってくるようになった。そして、ラルサもラルサの父もか
すり傷ひとつおわないのだった。
 村の男たちはラルサには不思議な力があるとうわさするようになった。
 たとえば、敵の待ちぶせを受けたとき、先頭を歩いていたラルサに無数の矢
が降りそそいだのに、たったの一本の矢も当たらなかった。
 あるいは、ラルサが木のうえにのぼって、敵の村のようすをさぐっていたこ
とがあった。あしをすべらして地面に落ちたのに、まったくけがをしなかった。
 そしてあるときは、道にまよってしまい、村への帰り道がわからなくなった
とき、ラルサにだけ正しい方角がわかったのだった。
 こうしてラルサの家は豊かになっていった。
 そんなとき、こんどは西の村をおそうことになった。
 ラルサたちは見覚えのある道を通っていった。村が見えるところまできて、
ラルサはそこが自分の育った村だということがわかった。ラルサの父がおたけ
びをあげて柵をのりこえた。ほかの男たちもつづいた。しかたなくラルサも同
じことをした。
 見ると、ラルサの父が村の男と一対一で戦っている。足の悪いラルサの父は
押されぎみだった。相手のやりをよけるのでせいいっぱいだ。やがて父は、自
分のやりをはじき飛ばされた。とっさにラルサは、やりを男にむかって投げつ
けた。やりは男の胸にささり、男は息たえた。
 男はラルサの知っている人だった。ラルサはその場に立ちつくし、男の顔を
だまって見ていた。この人はなぜ逃げなかったのだろう。
 ラルサはそばの小屋に人の気配を感じた。慎重に中をのぞくと、ラルサと同
じぐらいの年の少女が、おびえた顔ですわりこんでいた。死んだ男の娘だった。
「よくやった息子よ。」
 ラルサの父が小屋に入ってきて、少女を引っぱりだした。
 戦士たちはひきあげることにした。
 えものはたくさんの食料とひとりの少女。
 少女には名前があった。ラルサはそれを知っていた。幼いころよく遊んだム
アウだった。
 村に帰ると、ムアウはラルサの父のどれいとされた。
 ラルサの母の手伝いをさせられたり、ラルサの身のまわりのせわをするよう
になった。
 父親を殺した人間のせわをする。それがどういうことか、いまのラルサには
はっきりとわかっていた。ムアウにあやまりたいが、どんなことばも無意味だ
った。
 それでもムアウは、ラルサに不思議なやさしさをみせた。ラルサのためにて
いねいに食事をつくり、あたまを洗ってくれた。ひょっとしたら、ムアウのほ
うも、幼いころのラルサを覚えているのかもしれなかった。
 時がながれ、ムアウよりすこし低かったラルサの背が、ムアウを追い越し、
ムアウよりずっと高くなった。
 家は大きくなり女たちは増え、家畜もどれいもふえた。
 だが、ラルサにとって悲しいときがやってきた。母が死んだのだ。
 母の病が治せなかったというので、まじない師はラルサの父にさんざんなぐ
られてしまった。
 葬儀がすんで喪があけると、父は、ムアウを次の妻にすると宣言した。ラル
サはおどろいたが、ムアウはもっとおどろいた。
 夜がふけてから、バオバブの木の下でふたりはおちあった。
 闇の中でひそやかな声がした。
「なんということだ。」
「反対はできないのですか。」
「あの父がわたしのいうことなどきくものか。」
 森のほうから猿の遠ぼえがきこえた。
「いやです……わたし……。」
「逃げよう。村の南に狩りのときに使っていた小屋がある。」
 夜のうちにふたりは村をぬけだした。
 ラルサはムアウの足あとをのこさないように注意した。足あとが見つかれば、
呪いをかけられるかもしれないからだ。





★★★
「ラウムの父って、すっごく悪い奴だとおもうよ」
 まぁ、まぁ。
 戦争を生活の糧にする習慣のない、僕らにとっては、悪いことかもしれない
けれど、戦争童話の中の話は、実際に戦争を生活の糧にする習慣の社会の話
だもの。悪いと決め付けるのは良くないと思う。
「でもさ、でもさ、なんか納得いかないよ」
『そうですね。そもそも戦争は不条理なものなのかもしれません』
 わ、シニョール呟き尾形。
 でも、”ラルサとムアウ”の中じゃ、戦争は特に悪いことと言うより、
当たり前のことみたいだよ。
『そうですね。そうした価値観や習慣を持てば、当たり前ということです。
 でも、それは、被害者にとっては、当たり前どころか不条理なものである
のは、ラルサの気持ちと、ムアウの言葉に見事に現れていますよね』
 なるほどねぇ。ラルサとムアウは、戦争童話で、上手に戦争について
かけているというわけか。
『私は、読んでいてそう感じました』
 う〜ん、奥が深い。
 なんにしろ、アルデベルチ










 




第35回へ戻る(修辞術について あざけり法、毒舌法)

第36回へ戻る(ラルサとムアウの全3回の1回)

 

第38回へ進む(ラルサとムアウの全3回の3回)

 

タイトルへ戻る