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小説を書こう!
第27回
 投稿小説 僕が僕であるために 第3回

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボォン ジョルノ、こんにちわ。クニークルスです。
「こんにちわ。みなさん。ムーシコスです」
「今回は、さて、今回は、投稿小説を掲載します。全6回で、予定では週間
で発行予定です。」
 リアリティーのある文章の書き方のまとめ については、ちょっとお休み
です。
「投稿していただいた方は、いるまがわさん。
 ジャンルはSF。これまでいろいろ投稿してくれたいるまがわさんだけど、
ちょっとかわったジャンルだね」
 それじゃ、僕が僕であるためにの全6回の第3回。はじまりはじまりぃ〜。


 作者名:いるまがわ
 ジャンル:SF
 メールアドレス:irumagawa@hotmail.com
 URL:http://www1.s-cat.ne.jp/irumagawa/
 小説の題名:僕が僕であるために(第3回)

 あいかわらず、医者たちは医者たちだけで話し合っている。
「体のマヒはないのか?」
「ありません。指先まで正常です」
 僕は彼らの会話に割り込むことにした。
「ドクター。僕のことは、妻には連絡が行っているんですか?」
 医者たちは顔を見合わせ、次にバラバラの方向へ視線をさまよわせた。一人
が答えた。
「事故のことはご存知です」
「ならなぜここへ来ないんです」
「知りません」
 僕は話の方向を変えてみた。
「妻に電話させてください」
 すると医者は、
「まだ病室から出ないでください」
といった。何かへんだ。
「今日はこれで……」
といって、ドクターたちは出て行く。
「ドクター!」
 僕は扉にむかって叫んだ。もしやと思ってノブを回すと、ドアには鍵が掛か
っていた。
 閉じ込められた!
 どうして僕を。
 マーガレットとエイミーのことが頭をよぎる。ふたりは無事なのか。なにか
あったんじゃないのか。
 ここから出なくてはならない。出て、家に帰るのだ。だが、どうやって。
 食事の時間が近づいている。僕は窓のブラインドを下げてわざと部屋を暗く
し、それからベッドの下に隠れた。
 ドアの下端がわずかに見える。やがてノックの音がしてドアが開いた。僕は
息をひそめ、身じろぎもせず、じっとしていた。
「スミスさん」
 看護士が二人入ってきた。いつもと同じなら、屈強な男たちのはずだ。頭上
でカーテンを開く音が聞こえる。
「おかしいな」
「どうした」
 ブラインドが開き、光がさしこんできた。一人は窓のそばにいる。
 僕はベッドの下から飛び出し、ドアの外へ出た。
 背後で、
「あっ!」
という声が聞こえるが、かまわず走った。
 できるだけ廊下を曲がりながら、患者のあいだをすりぬけて僕は走った。そ
れは足を引きずりながらだったが、僕にしては精一杯だ。目の前にエレベータ
ーがある。それに飛び乗り、下へのボタンを押した。
 降下している間、僕は自分がパジャマで裸足なのに気がついた。奇異な目で
見られて目立つだろうか。
 エレベーターの扉が開いた。外へ出ると、そこは僕が想像していたのとはか
なり違っていた。病院にもかかわらず、煙草の煙で遠くが霞んで見える。泣き
わめく赤ん坊を抱いた母親がいる。身なりの貧しい老人たちが受付で列を作っ
ている。みな、髪が乱れ、生活に疲れた顔をしていた。そのような人間たちで
ごったがえしていたので、僕がどんな格好をしていようが、気に留める者はい
なかった。
 ここは一階の入り口だったのだ。僕はこのような受付を利用したことは無い。
上等の保険に加入している者は、上の階の広々とした清潔な入り口を利用する。
 とにかく僕は人ごみをかきわけて進んだ。
 玄関から外へ出ると、高架道路が頭上を覆い、空が見えずに薄暗かった。か
すかな隙間から太陽の光が差し込みオレンジ色をしていた。シティは夕日に染
まり始めているらしい。背後で警備員が何事か無線で話している。僕はその場
を離れ、無人タクシーが並んでいるところへ向かった。
 タクシーの上部にある小さな窓に僕は自分の名前をいった。
「カシウ・J・スミス 市民番号DX5643-CPM89442」
『認証しました』
 車のドアが開いたとき、後ろの警備員が何か叫びながら走ってきた。僕は中
に滑り込み、早口で行き先をいった。
「ツインズヒル デカルト通り29番」
 もどかしげにゆっくりとドアが閉まる。警備員がかけつけて僕になにかいっ
たが、警官ではないので、車を止める力はない。タクシーは走り出した。
 車の上をオレンジの照明が通り過ぎていく。やがて視界が開け、上の道との
合流点に出た。ここからはシティの郊外になる。
 太陽が沈みかけている。夕日の向こうにツインズヒルが見えてきた。僕の家
が見える。自分で設計した、1950年代風の白い家だ。
 タクシーが停止しドアが開いた。僕は自分の家の前に立った。庭のほうに明
かりがさしている。僕はそちらへまわった。芝生の上を歩いているので足音一
つしない。静かだ。ブランコがあるが時が止まったように動かない。
 明かりのついた大きな窓の中で、三人の人間が団らんを楽しんでいるのが見
えた。
 一人はマーガレット。
 一人はエイミー。
 そのエイミーを膝に乗せている男がいる。
 誰だ?
 マーガレットもエイミーもしきりにその男に笑いかけている。
 男の顔を見たとき、僕の心臓は凍りついた。僕だ! 僕と同じ顔をしている!
 次の瞬間、背中の後ろから真っ赤な憎悪が上りつめて僕を行動に駆り立てた。
「ウォーーーーーーーーッ!」
 獣のような声を出して僕は窓に突進した。強化ガラスを素手で殴り、体当た
りし、叫び続けた。
 エイミーがおびえるのが見える。
 マーガレットが男にしがみついた。
 男は呆然と僕を見つめている。
 それらの様子を僕はどこかで冷静に見ていた。
 やがて後ろのほうでサイレンの音が聞こえてきた。パトカーが数台、背後で
止まり、警官が僕を取り囲んだ。そうして僕は当局に拘束された。




★★★
「なんか、おかしいよ。なんでつかまっちゃうのさ!」
 どうして?
「だって、もともと、sideBの方の主人公が本物じゃない?」
 ん? それほんとう?
「だって・・・、クローンはコピーなわけじゃない?」
 でも、完璧にコピーされていて、sideAにあるように、本人はコピー
されたという自覚もないし、まったく同じなら、どっちが本物だなんていえ
ないじゃない?
「それはそうだけど・・・よくわかんなくなってきたぞ」
 それは次回のお楽しみ。それじゃ、アルデベルチ。
 



 

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