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小説を書こう!
第29回
 投稿小説 僕が僕であるために 第5回

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボォン ジョルノ、こんにちわ。クニークルスです。
「こんにちわ。みなさん。ムーシコスです」
「今回は、さて、今回は、投稿小説を掲載します。全6回で、予定では週間
で発行予定です。」
 リアリティーのある文章の書き方のまとめ については、ちょっとお休み
です。
「投稿していただいた方は、いるまがわさん。
 ジャンルはSF。これまでいろいろ投稿してくれたいるまがわさんだけど、
ちょっとかわったジャンルだね」
 それじゃ、僕が僕であるためにの全6回の第5回。はじまりはじまりぃ〜。


 作者名:いるまがわ
 ジャンル:SF
 メールアドレス:irumagawa@hotmail.com
 URL:http://www1.s-cat.ne.jp/irumagawa/
 小説の題名:僕が僕であるために(第5回)

「さて、マーガレットさん」
 丸めがねの弁護士が質問を始めた。
「事故前後のスミス氏の様子について、語ってください」
「あの日、夫はいつものように車で出社しました。普段と全く変わらない朝だ
ったことを覚えています。昼になって、事故の知らせを受けた私と娘は病院に
駆けつけました。そこで難しい手術をするというので、親族同意の書類にサイ
ンいたしました」
「手術の結果は?」
「失敗だったと聞いています。でも、夫はクローン保険に加入しているという
ことを医師に知らされまして、それにより夫は生き返るのだと思いました」
「実際、生き返りましたか?」
「はい。翌日に元気な姿を見ることができました。私も娘もとても喜びました」
「事故前と何か変わったところはありますか?」
「いいえ!」
 妻はきっぱりと答えた。
「何一つ変わりません。あの人のことは私が一番よく知っています」
「スミス氏を愛してらっしゃる?」
「……あの人も私と娘を愛してくれています」
 僕は拳を握り締めた。
 ヒゲの弁護士が立ち上がり、質問した。
「マーガレットさん。さきほどあなたは、スミス氏のことは自分が一番よく知
っているとおっしゃいましたね」
「言いました」
「ではスミス氏の生まれはどこですか?」
「ペンシルバニアです」
「幼なじみの名前とか言えますか?」
「ジョージ・スペクターさんという方と親しかったと聞いております」
「スミス氏がはじめて付き合ったガールフレンドの名は?」
「それは……存じません」
「スミス氏は覚えていると思いますか?」
「たぶん、覚えていると思います」
 ここでヒゲの弁護士は咳払いをした。
「そういうことなんですよ。奥さん。スミス氏を一番よく知っているのはあな
たではない。スミス氏をよく知っているのはスミス氏自身なのです」
 傍聴席がはじめてどよめいた。
「あの日、オリジナルの――元スミス氏でしたかな、彼が家に現れて窓を叩い
たとき、それを見たあなたはどう思いました?」
「怖かったです。私も娘もただただ震えてました」
「彼の顔は見たんでしょう? それでスミス氏だとわからなかったんですか?」
「顔は見ました。けど、混乱していて……」
「家庭を守りたかった?」
「そ、そうです」
「あなたは家庭を愛してらっしゃる?」
「その通りです」
「スミス氏よりも」
「え?」
「あなたは家庭を守るほうが、スミス氏よりも大事なのですな」
「異議あり! 一方的な決めつけです!」
 向こうの丸めがねが叫んだ。妻も否定した。
「そんなことはありません」
「それならなぜ、あのとき、窓を開けて、オリジナルのスミス氏と会わなかっ
たのです?」
 妻は答えられなくなった。
「陪審員のみなさん。今ここに、身なりがよくて稼ぎのいいコピー……現スミ
ス氏がいるとします」
 ヒゲは十二人の注意を引き付けた。
「そこへ、本来オリジナルの権利をもっているはずの元スミス氏が現れた。パ
ジャマ姿で裸足です。逃げてきたので髪を振り乱していたでしょう。彼女の目
には、家庭を破壊する侵入者にしか見えなかったのです。
 それはなぜか? 彼女が本当にスミス氏を愛しているわけではないからです。
彼女が愛していたのはスミス氏が作り出していた家庭だったのです」
「ちがいます!」
「どうちがうんです? あなたが愛していたのはスミス氏の能力ですか? 稼
ぎ? それとも社会的地位?」
「ちがいます! ちがいます!」
 妻は顔を覆ってしまった。僕は耐えられなくなった。
「やめてくれ! やめてくれ、ハックマン! それ以上、マーガレットを苦し
めるな!」
 僕が大声を上げたので傍聴席が騒然となった。
 裁判長は、
「静粛に! 静粛に!」
と繰り返した。
 すると、ヒゲの弁護士――ハックマンは何度かパンパンと手を鳴らした。
「素晴らしい! 自分が不利になるのもかまわずに、奥さんをかばうとは! 
これが本当の愛情です。オリジナルのスミス氏とはこういう人なのだというこ
とを、陪審員諸君は覚えておいてください」
 場は静まりかえった。
 何だったのだろう。ハックマンは機転を利かせたのか、それとも最初からこ
うするつもりだったのだろうか。
 とにかく、ヒゲの弁護士は波に乗っていた。次の証人は僕のクローンだった。
丸めがねのあたりさわりのない質問の後で、ハックマンはクローンに切り込ん
だ。
「現スミスさん。あなたはクローンですね」
「どうやらそうらしいです」
 クローンは苦笑いした。
「実感がない?」
「はい」
「しかし、事故以前と違うことがあるでしょう?」
「別になにも……」
「本当に?」
「本当です」
「よく考えてください。調べればわかることですよ。例えば、あなたの身体的
特徴とか……」
 このとき、クローンの体が震えるのが見えた。明らかに何かを思い出してい
た。


★★★
「sideBの主人公には裁判に買って欲しいけど、なんだか、この弁護士嫌
い」
 なんか、人の感情をもてあそんでいる印象があるものね。
「でも、クローン、え〜っと、sideAの主人公は何を思い出したんだろう
ね」
 きちんと、伏線は張ってあるよ。
「え? なんだっけ?」
 それは次回のお楽しみ。それじゃ、アルデベルチ。

 


 



 


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